米インサイダーも本件を取り上げた。ウクライナ側の情報をもとに、「ロシア軍とワグネルの傭兵らが、戦争の失敗を互いに責めた末に銃撃戦で殺し合った」と記事は報じている。

本情報はウクライナ側からの発表内容であり、ロシア側が公式に認めていない点に注意が必要である。だが、ワグネルトップのプリゴジン氏とロシア軍を率いるショイグ氏との度重なる不仲を考慮すれば、一概に不実とも断言できない現状がある。

インサイダーは「しかしながら複数の報告書が、ロシア軍がウクライナで友軍による銃撃に苛まれていることを示している」とも指摘する。

同記事は、英シンクタンクの王立防衛安全保障研究所(RUSI)による分析を踏まえ、紛争初期には敵味方の識別が困難であることを原因とした誤射が多かったとしている。しかし、その後も「意図的と思われる事例」を含め、ロシア勢同士が銃火を向け合う例が絶えないという。

ワグネルに限らず、ロシア正規軍の内部でも、自軍の兵士を撃つことを辞さないようだ。英国国防省は昨年11月、ロシア軍が部隊の最後尾に「ブロッキング・ユニット」と呼ばれる兵士らを配置していると発表した。逃走を防ぐため、退却する兵士を銃で撃つと脅しているのだという。

プーチン、国防相、傭兵トップの「こじれた三角関係」

プリゴジン氏とロシア軍司令官らのあいだには、これまでにも度々亀裂が指摘されてきた。

プリゴジン氏は4月、長期化するウクライナ侵攻に疑問を呈している。タスク&パーパスが報じたところによると、氏は3000字以上の長文をオンラインで発表。「理想的な選択肢は、掲げられた目標のすべてを達成したとロシアが宣言し、特別軍事作戦を終了することである」と主張した。侵攻の旗を振るプーチン氏や軍司令官らに反発したとも取れる、異例の発言だ。

プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ氏
プーチン大統領とセルゲイ・ショイグ氏(写真=大統領報道情報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

軋轢は続く。AFP通信は5月上旬、ロシア軍からの弾薬供給が受けられないとして、プリゴジン氏がバフムートからの撤退をちらつかせる脅しに出たと報じている。脅迫が功を奏し、ワグネルに弾薬の供給が再開された。プリゴジン氏とロシア軍が必ずしも強固に団結しているわけではないことを物語る、象徴的な諍いとなった。