明治期の日本は「質素と正直の黄金時代」

幕末から明治初期に日本に訪れた西洋人の中には、アメリカの初代駐日公使のタウンゼント・ハリスやイギリスの日本学者バジル・ホール・チェンバレンのように、「日本に西洋文明を持ち込んで幸福になるとは思えない。すでに日本人は幸福である」と考える人も多くいました。

特にハリスは、

タウンゼント・ハリス氏(写真=PD US/Wikimedia Commons)
タウンゼント・ハリス氏(写真=PD US/Wikimedia Commons

「これがおそらく人民の本当の幸福の姿と言うものだろう。私は時として、日本を開国して外国の影響を受けさせることが、果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所為であるかどうか、疑わしくなる。私は質素と正直の黄金時代を、いずれの他の国におけるよりも多く日本において見出す。生命と財産の安全、全般の人々の質素と満足とは、現在の日本の顕著な姿であるように思われる」

とはっきりと言っています。

日本人の倫理・道徳心は今に継がれている

日本は穏やかで平和な国であり、人々が互いに助け合い思いやる幸福な民族が生活する国です。

明治維新は、当時すでに日本近海まで迫っていた欧米列強の侵攻に対抗し、独立を守るためになされなければならないものでした。国家として必要なことであり、それについての明治政府の国家運営は十分に成功したと思います。

日本は明治維新以降、「文明開化」「和魂洋才」「殖産興業」など、さまざまなスローガンを掲げて西洋の文明を吸収しました。明治維新前から最も大きく変わった点は防衛でした。「富国強兵」による軍事力の拡大です。

西洋は、世界に対して植民地政策を展開して世界の覇権を獲得した理由をさまざまに説明します。哲学が優れていたからだ、文化が進んでいたからだ、布教の使命感があったからだ、科学技術が先進していたからだ、などといろいろに言います。

しかし、その本質は「軍事力」でした。大砲を搭載した軍艦をどれだけ保有するかが植民地政策の肝であり、戦争に勝てなければ話にならない、というのが当時の国際常識でした。

モースが「部屋に鍵をかけないのに机の上の小銭がなくなったことがない」と言って感心した日本人の倫理・道徳心の高さは今に継がれています。