当初はオンライン営業に積極的、今は対面に戻りつつある

【A】今やD&Iはどの企業も経営課題に挙げていて、取り組みを行っています。ところが、トップにその熱意があっても、やはり現場の社員との間には部長、課長と階層がいくつもありますよね。うちの場合、大概どこかの階層にD&Iを妨げる要因があり、なかなか現場まで浸透しない現実がある。皆さんの会社はどうですか?

【C】コロナを機に在宅勤務を本格導入して柔軟な働き方を定着させようとしているのですが、日頃「D&I推進」を盛んに口にしている当の役員たち本人が出社して、役員室からリモート会議に出席している。お客さまへの営業も、コロナ禍当初はオンライン営業に積極的に切り替えていく方針だったのに、今はもうほぼ対面に戻りつつあります。

技術と書類で会う人々のグループ。
写真=iStock.com/courtneyk
※写真はイメージです

【A】うちもいざコロナでテレワークが始まったと思ったら、紙じゃないと説明は受けられない、説明はリモートじゃなくて直接などと言い出す役員が現れて、結局出社せざるをえない状況でした。

ある部長から「子どもが小さいのに出社して偉いね」と言われて(笑)。結局は会社に来る人が評価されてしまう。トップが言っていることと、現場がやっていることがまったく違うんですよね。

【C】同じです(笑)。とにかく新しいものを使おうとしないし、パソコンのセキュリティーも厳しすぎて、チャットツールやZoomも使用するのに上司の許可が必要なんですよ。

しかも働き方改革についての発信は熱心なわりに、人づてに降りてくる上層部の本音は「対面が大事」。当然、社内全体が在宅勤務しづらい雰囲気になってしまいました。

【B】うちも人によってはD&Iに否定的な社員はいます。そこで、女性管理職比率など数字の目標だけではなくて、会社の課題解決には女性活躍推進が不可欠だということをトップメッセージとして、管理職含めた全社員研修で徹底的に共有しています。

【D】オーナー企業だと、D&Iのような新しい試みもトップダウンで進めやすいんでしょうね。

【A】対外的な数字ばかりにとらわれ、何のためにD&Iをやるのかという意識がうちには足りない気がします。

【B】さらに食品業界はターゲットが年齢性別問わず幅広いうえ、今後はよりグローバルに展開していくにあたり、性別だけでなく年齢や国籍など人材の多様性自体も大きな課題。そこでキャリア採用を積極的に行い、今は全社員の45%をキャリア採用の方が占めるようになりました。