カネが回収できるのかできないのかが大事

モノを売るのは簡単なことです。

かつて私は中国事業の責任者として現地で工場を立ち上げ、販売の指揮にも当たりました。そして販売代理店を回って営業しました。

日立建機元社長
木川理二郎

1947年、福岡県生まれ。70年九州大学工学部卒業後、日立建設機械製造(現日立建機)入社。生産技術畑を歩んだのち、95年日立建機(中国)有限公司総経理就任。06年~12年3月、社長。2012年4月より会長。

「買ってくれますか」「いいですよ」

こんな調子でおもしろいように売れるのです。

「なんだ、意外に簡単じゃないか」と思いました。ところが、いつまで経っても代金を払ってくれないのです。

中国北部で開催した展示会では、お客様が販売契約書にサインしながら、真顔で「代金は大豆で払うよ」。

またある日は、お客様が札束の詰まったズダ袋を担いでやってきました。現地の経理部長が当たり前のように「偽札発見器にかける」と。私が驚いていると、本当に2枚偽札が混じっていて、もっと驚きました。

そこでようやく「会社というのは、モノをつくって、売って、カネを回収できて初めて成り立つ」と痛感したのです。そこまでやって「営業」と言えるのだと。

キャッシュフローなどという小難しい言葉を出すまでもありません。カネが回収できるのか、できないのか。そこが大事なのだと、海外での経験を通じて初めて理解できました。