出口戦略が不十分なまま、感染が再拡大

12月7日、中国共産党政権はゼロコロナ政策の緩和を発表した。12日には行動追跡アプリの運用が止められた。その背景には、いくつかの要因が絡んでいる。“白紙運動”など、強引なゼロコロナ政策継続に対する国民の反発は大きい。また、世界保健機関(WHO)はコロナ感染の終わりが視野に入りつつあるという見方を示し始めた。

それに加えて、中国では不動産市況の悪化などによって地方政府の財政状況が悪化した。大規模なPCR検査を徹底する負担は増している。そうした状況下、徐々に共産党政権はゼロコロナ政策の部分的解除を目指した。

ただ、そのタイミングは悪かった。ワクチン接種の増加、治療薬の十分な量の確保、医療体制の拡充などウィズコロナ移行の準備が不十分なまま、ゼロコロナ政策は事実上解除された。その結果、中国の感染再拡大の状況は一段と深刻化している。首都北京市などでは火葬場に長蛇の車列ができた。共産党政権は急速に増加する感染者の把握に苦慮しているとみられる。足許、中国市民の防衛本能は一段と高まっているだろう。それは今後の中国と世界経済にとって無視できないマイナスの要因だ。

北京の病院前で、診察を待つ中国の人々(=2022年12月21日、中国・北京)
写真=AFP/時事通信フォト
北京の病院前で、診察を待つ中国の人々(=2022年12月21日、中国・北京)

風邪薬の“パブロン”が買い占められる

足許、中国で再度、新型コロナウイルスの感染者が急増しているようだ。北京市の感染状況を確認すると、感染再拡大は急激だ。12月中旬時点で北京市では救急車の出動要請が通常の6倍程度に増えたと報じられた。市内の薬局では抗原検査キットや解熱剤などの大衆薬を買い求める人が急増し、品切れが続発している。広州市では解熱剤の需要が急増し価格を引き上げた薬局が当局に摘発された。

影響はわが国にも広がっている。ゼロコロナ緩和後、東京都内のドラッグストアでは風邪薬や解熱剤を買い求める人が増えた。転売や知人への提供などがその背景にあるだろう。風邪薬の“パブロンゴールド”を製造する大正製薬の株価が大きく上昇する場面もあった。