帰国子女の価値上昇

なぜ帰国子女枠を拡大する学校が増えているのか

ここ最近、私立中高一貫校で目に付くトレンドがひとつある。帰国子女やインターナショナル・スクールの卒業生を受け入れる「国際枠」の拡大だ。

東京の人気男子校のひとつ、海城中学校は2011年の春から、数名程度だった帰国子女枠の定員を30人へと大幅に拡大。実践女子学園中学校や栄東中学校は08年、市川中学校は09年から帰国生入試を新設したほか、帰国後の期間などの受験条件を緩和したり、入試科目を調整するなどして、帰国子女にとって受験しやすい工夫を取り入れる動きも目立つ。

文部科学省の「学校基本調査」によれば、1年以上海外に在留した後に日本に帰国する小学生は、2007年度で6401人。こうした層に門戸を開く意図は当然あるだろう。

一方でVAMOSの富永氏は、帰国子女でない生徒にとっても「国際枠」の拡大にはメリットがあると指摘する。「帰国生に引っ張られて、一般の生徒も英語力が上がるんです。将来子供に留学を望んでいるようなエリートサラリーマン層が、こうした学校に注目しているようです」

東京・品川区にある攻玉社中学もそのひとつだ。同校は1990年から、帰国子女に専門の教育を行う国際学級を開設。毎年40人ほどの帰国生を受け入れてきた。

中学3年間は6クラスのうち1クラスが国際学級で、一般クラスの生徒とは別の授業を受ける。そして高校1年生にあたる4年生に進級すると、一般生と同じクラスに編入され、5年生からは進路別のクラスで大学受験に臨むことになる。

「同じ帰国生枠でも、どこの国にいたか、現地の学校に通っていたか日本人学校にいたかで英語力に差があり、英語の授業も2クラスに分けて行っています」と、同校の英語科主任、本間邦彦先生は言う。

「教える側としてはやはり緊張感がありますね(笑)。ただ、現地の小学生レベルの会話力はあっても、英語での勉強の仕方や、きちんとした英文を読み書きする力は開発途上で、教えがいがあります」