2022年8月に近畿日本ツーリストが「PTA業務アウトソーシングサービス」を開始した。東京都内の公立小学校でPTA会長を3年務めた政治学者の岡田憲治さんは「時代にそぐわない活動を続けてきたPTAにとって、今を生きる者たちの生活の要望に沿った改革・工夫は不可欠だ。そのためには、持ちうるリソースで『外注』を選択すれば良い。しかし、それは『運営を丸ごと投げる』こととは異なる」という――。
日差しが入っている教室
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老舗旅行代理店が“PTAマーケット”に参入

PTAをめぐる「強制や嫌々ながらの参加」、心に沈殿する「ノーと言えずに無理して生まれる怨嗟」は、SNSの日常化によって、地底から噴き出すマグマのようにすっかり顕在化してきている。上部団体からの政令都市P連の離脱の動向なども報じられつつある。

そんな問題の可視化が進みつつある昨今、ついに老舗の旅行代理店が「PTA業務アウトソーシングサービス」として、公然とPTA「マーケット」に参入してきたことは、少なからず波紋を呼んでいるにちがいない。「それはいくら何でも」と「その手があったか」の両方であるかもしれない。

多忙ゆえに負担も重く、各保護者のスキルやセンスもバラバラで、ボランティアなのに「一人一役」という準強制的なものとしてやらされているPTA会員に、救いの手を差し伸べてくれる、「金で解決できる」のがこのサービスなのだろう。

PTA会長をしていた3年前当時は、私は冗談モードでアウトソーシングについて話していた。東京の中でもかなり暮らしぶりの良いエリアの公立学校では、全てが業者に代行されるんじゃないかと想像していたのだ。芸能人や高額所得者がたくさん住んでいる地区では、私的生活をさらしたくないという事情も合わさって、「お金で解決できるならそれで良くない?」という人たちが必ず束でいるはずだと思ったからだ。

しかし、今やこの旅行代理店の参入によって、もはやこれは冗談ではなく、現実となった。

アウトソーシングでPTA業務の効率化は進むのか

PTA業務(仕事じゃなくて「活動」なのに!)をアウトソーシングする最大の理由は「効率の追求」だろう。もちろん、利潤追求の企業とは異なり、PTAは「任意団体」であるから、効率がこの組織の至上命題であるはずはない〔「自由に出入りも運営もできる幸せのための仲間づくりをする組織」が任意団体の本来の意味なのに、多数の保護者がPTAを「学校や教育委員会の(行政の)下部機関」だと誤解している!〕。

だから「効率化せよ」という気持ちの起点は企業とは異なり、それは「負担を減らしたい」という、「嫌々ながらやっている苦しみを軽減してくれる」という期待なのだ。

この2〜3年はPTA活動リストも棚卸しが進み、「コロナですから」の7文字で、これまで手をつけなかった無駄な活動をスクラップできているのだから、この期に及んで活動の負担が重いとなるのも不思議だ。でもこの社会の真面目人たちは、これまでの慣習から完全に解放されることがなく、相変わらずPTAの仕事に追われていて、だからお金で代行してくれるサービスは贈り物のようなものなのかもしれない。

コロナで旅行代理店も大打撃を被っているはずだし、細かいサービスや顧客視点を常に意識してきた会社には、「おもてなし」的精神のあるPTAを代行するには好都合だと思える。これであの苦しみからも解放されるのかもしれないと。