企業の“コロナ倒産”がここへきて急増中

企業倒産がじわじわと増加しつつある。東京商工リサーチが10月11日に発表した全国の4~9月の倒産件数は前年同期比6.94%増の3141件と、3年ぶりに増加した。9月単月では前年同月比18.61%増の599件と今年に入って最多で、6カ月連続で前年を上回った。

官邸に入る岸田首相
写真=時事通信フォト
首相官邸に入る岸田文雄首相=2022年10月12日、東京・永田町

倒産が急増した最大の理由は、新型コロナウイルス感染拡大に対応して導入した実質無利子・無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)の返済が本格的に始まったことにある。

ゼロゼロ融資は、コロナ禍で売り上げが減った中小企業を対象に、金融機関が担保なしで融資する制度で、借り手が本来金融機関に支払う利子を3年間、国や都道府県が負担する仕組み。もし返済できない場合は信用保証協会が返済を肩代わりする。2020年3月にスタートし、民間金融機関の受け付けは昨年3月まで、政府系金融機関は今年9月末で終了した。

このゼロゼロ融資の効果は絶大で、コロナ禍にもかかわらず21年度の企業倒産は半世紀ぶりに6000件を下回るなど歴史的低水準に抑えられてきた。しかし、ゼロゼロ融資は最長5年まで元金の返済開始を猶予でき、最初の3年間は利払いも実質免除する仕組みで、「元金返済の猶予期間を3年以内に設定しているところが多い」(メガバンク幹部)とされる。

その猶予期間が過ぎ、返済が本格化する中、大幅な円安や燃料費・原材料費の高騰が重なり、倒産に追い込まれる企業が増えているのだ。

岸田首相は倒産回避策を打ち出す予定

同時に、信用保証協会の返済肩代わり(代位弁済)も急増している。8月の代位弁済は前月比26%増の266億円で、前年同月を上回るのは12カ月連続だ。

中小企業庁によれば、ゼロゼロ融資の実行額は今年6月末で約234万件、42兆円に及ぶ。「ゼロゼロ融資という巨大な融資の塊を、企業倒産を回避しながらどうソフトランディングさせるか。返済猶予や返済条件の緩和には従来より前向き、かつ柔軟に対応しているが、債権放棄(私的整理)となると次元が異なる」(メガバンク幹部)という。

そこで、政府は10月末の総合経済対策で、岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の追加策を打ち出す。その柱のひとつに、経営不振に陥った企業が債務を圧縮する私的整理をすべての債権者が同意しなくても進められるようにする条件緩和策が盛り込まれる予定だ。