運命を決めた起業家の言葉

そんな矢先に大学の授業でライフネット生命保険の創業者・出口治明さんの話を聞く機会があった。そこで「これだけは誰にも負けないという強みをつくったら、それで人生は広がっていく」という言葉を聞き、平井さんは「私は料理を、もっともっと究めてみたい」と思ったという。

それから平井さんは食べに行った店を気に入ると、いきなり「この店で働きたい」と直談判するなどして、さまざまな店で経験を積んでいく。大学に通いながら飲食バイトに明け暮れる日々の中、転機が訪れたのは、“世界一の朝食”と称される「bills」のアルバイト時代。

ワーキングホリデーを利用し、シドニーにある1号店・サニーヒルズ店で修業できることになったのだ。「お金をもらいながら料理も外国語も学べるなんて最高」と意気揚々と1号店に向かった。が、予想外の反応が待ち受ける。

「bills」サリーヒルズ店
写真=本人提供
「bills」サリーヒルズ店

役立たずすぎて、30分で業務終了

「1号店は忙しいキッチンを4人の少数精鋭で回していて。行ってすぐに『この食材、マイナイフで切って』と指示を受けたのですが、私はもちろんマイナイフなど持っていなくて……。店の人は、日本から助っ人が来る! と期待していたのに、来たのは全然仕事ができない私。『日本からヤバいやつが来た……』というような印象だったと思います。シフトに1日5時間くらい入る予定でしたが、初日は30分で帰されて落ち込みました」

しかしそこでも負けじとくらいついた平井さん。2週間後にはじめてヘッドシェフに「今日はユキナがいて助かったよ。ありがとう」とやさしく声をかけられたときは涙が出るほどうれしく、興奮してよく眠れないほどだった。

オーストラリアのシドニーにて、1号店のシェフと。
写真=本人提供
オーストラリアのシドニーにて、1号店のシェフと。