買手は負担が大きいため、免税事業者やインボイス制度への未登録事業者との取引を打ち切り、適格請求書発行事業者への切り替えを進めることになるだろう。あるいは、消費税の納税額が増す分を相殺するため、免税事業者に値下げを要求するかもしれない。

実際には、3年ごとに段階を経て控除額を減らしていく経過措置(80%→50%→全額)がとられていて、2023年10月からすぐに買手がまるまる仕入税額控除できなくなるわけではない。とはいえ、買手からすれば、免税事業者との取引が不利になることは確実であり、早い段階で取引を打ち切る方向に進むだろう。

TAXと書かれたブロックがのったコイン
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ビジネス利用が少ない飲食店などは制度の意味はない

ただし、買手や事業者の業態によっては免税事業者のままでいても、影響が少ないケースもある。簡単にポイントを説明すると次のようになる。

例えば、立ち食い蕎麦店のような業態であれば、接待などのビジネス利用はまずなく、適格請求書の発行を求められることは考えづらい。インボイス制度に登録しても意味がないだけでなく、免税事業者は益税を失う分、ただ損をすることになる。

同じ飲食店でも、ビジネス利用客が一定数いる場合は、売上に占める割合やインボイス開始後の世の中の動向によるだろう。多くの企業が「適格請求書を発行しない飲食店の領収書は受け付けない」となれば、適格請求書発行事業となってビジネス利用客をつなぎ留めるのと、免税事業者のままでいて益税を得るのと、どちらのメリットが大きいかを見極めることになる。

このほか、登録が不要なケースとしては、買手が「すべて免税事業者」である場合や、仕入税額控除額の計算を原則課税ではなく、「簡易課税(売上時に預かった消費税×みなし仕入率)」で行っている場合だ。いずれも適格請求書は不要となる。

「日本だけ導入されていないから」という単純な話ではない

海外ではすでに多くの国で導入され、OECD加盟国のうち、インボイス制度を導入していないのは日本とアメリカのみといわれている。そうした背景もあって、免税事業者に益税が認められてきたほうがおかしいという声も聞かれるが、そう単純な話ではないことは理解しておくべきだろう。

特に個人事業主においては、所得の少ないことは各種統計からも明らかであり、それが各事業者の問題なのか、構造的な問題なのかを考える必要がある。益税を得ていても所得が低いということは、思うような価格設定が行えていない可能性もある。