養育費ゼロ、持ち物を売ってやりくり

息子にとっても「帰りたくない家」だったのだと、胸が絞めつけられる。西崎さんは決してつらい思いをさせまいと覚悟を決め、家族3人の新生活をスタートした。まずは貯めていたお金や保険の貸付などで資金をかき集め、マンションのローンを完済する。離婚は成立したものの失業中の前夫からは養育費の支払いはなく、ヨガスタジオの店長職でも手取りは十数万円ほど。自分の持ち物を売るなどして、生活費はなんとかやりくりしていた。

その先に気がかりなのは子どもたちの学費だ。母子家庭の申請をすると児童扶養手当や授業料の免除を受けられ、大学進学には奨学金の借り入れもあったが、先行きの不安は尽きない。このままヨガスタジオの仕事を続けることを悩み始めた頃、たまたま目にしたのが「起業塾」の広告だった。

地下のゴミ捨て場から人生が動き出した

「福岡には女性の自立を支援するフリーペーパーがあって、スタジオの休憩室にも置いてあったんです。その中に起業塾についての記事があって、30代の女性が夢のような収入を上げていると紹介されていました。お昼ごはんを食べながら読んでは、『なんてうさんくさい!』と思って閉じる。次の日また見ては、『やっぱりうさんくさい』と(笑)。それでもあんまり気になるから、私はこんなものに惑わされてはいけないと思い、ゴミ箱に一度捨てたんですね」

すると捨てた後にますます気になり始め、もしかしたらまずいことをしたかも……と休憩室へ。だが、ゴミ箱の中身はすでに空っぽで、「やばい‼」と慌てて地下のゴミ捨て場へ駆けつける。そこから人生の歯車が大きく動き出すことになった。(後編へ続く)

歌代 幸子(うたしろ・ゆきこ)
ノンフィクションライター

1964年新潟県生まれ。学習院大学卒業後、出版社の編集者を経て、ノンフィクションライターに。スポーツ、人物ルポルタ―ジュ、事件取材など幅広く執筆活動を行っている。著書に、『音羽「お受験」殺人』、『精子提供―父親を知らない子どもたち』、『一冊の本をあなたに―3・11絵本プロジェクトいわての物語』、『慶應幼稚舎の流儀』、『100歳の秘訣』、『鏡の中のいわさきちひろ』など。