長生きなのに、仕事を失いやすい「女性」の立場

さて、自分が86歳になった今、見渡してみると、「人生100年時代」と言われる超長寿社会の真っただ中にいることがわかります。

なにしろ、健康寿命の話は別にして、日本の女性の平均寿命は2021年7月30日時点で過去最高、世界最高の87.74歳(ちなみに男性は81.64歳。厚生労働省「令和2年簡易生命表」より)。90代でバリバリの現役という女性も多くなりました。

一方で、たとえばコロナ禍のような、何か社会が不安定なとき、あるいは不安材料があるときは、まず女性が仕事を奪われていく。これが現在の状況です。

男性と比べて女性の仕事環境は、非正規とかパートタイムという形が圧倒的に多いために、何かあれば、真っ先に「雇い止め」になってしまうからです。

先の戦争でも退却を「転戦」、全滅を「玉砕」、敗戦を「終戦」、占領軍を「進駐軍」と言い換えてきた日本人の美的(?)な言語感覚が、この「クビ」を「雇い止め」と言ったりすることにも表れているのではないでしょうか。

長寿社会をどう生きるかは、「一人」が長い女性の問題

ともあれ、不況になれば、まず女性が失職します。実際に60歳を過ぎても何らかの形で働いている女性はたくさんいますが、非正規雇用が多いために、男性よりも先に「クビ」になるのは女性ということになるのでしょう。

そして70歳まで頑張ったとしても、そこで仕事を失ったとしたら、その先は平均寿命的に見ても、女性には男性よりも長い時間が待っています。それも、「一人で」という可能性が非常に高い。もともとシングルで生きてきたという人もいるでしょうが、夫と離別、死別して一人になったという女性も多いからです。

いずれにせよ、その「仕事のない一人の老後」という長い時間の中では、生きがいよりももっと切実な「生きていけるかどうか」という課題を突きつけられかねません。

ですから私は、現在ただ今の「人生100年時代」をどう生きるのか、という問題は、まさしく「女性の問題」だと思っています。