「晴れた夏の昼間」こそ太陽光発電が最も活躍する

疑問9:政府がこの夏は冷房を我慢しろとか超ムカツク。これもあれも脱炭素のせいだ!

「脱炭素のせいで火力発電所が閉鎖されて電気が足りない。この夏はみんな節電に協力を」。政府がこんな要請を出しているようです。わざわざ脱炭素のせいで電気が足りなくなったかのような書きぶりですが、実際のところは、太陽光発電のように一度設置したら燃料費ゼロでどんどん発電できる再エネの電気が増加し、燃料費がかさむ火力発電の採算がとれなくなり撤退に追い込まれた、というのが実態です。

ところで夏の節電といえば、エアコン冷房の「こまめなON/OFF」と「設定温度は28度」が定番ですが、なんとも面倒で不快です。そんな政府の要望なんて聞きたくもない。「オレは冷房をキンキンに効かせて甲子園を見るんだ!」という人にこそ、太陽光発電はベストマッチです。

冷房が一番必要なのは、晴れた夏の昼間。その時は太陽光もバリバリに発電しているので、そのままエアコンをバンバン動かすことができ、相性は最高です。好きなだけエアコンを効かせて全く問題ないのです。

一方、暖房は冬の夜に必要なので、太陽光発電だけだと不足しがちです。そのため、家の断熱・気密をしっかり確保した上で、屋根や窓から集めた「太陽熱」を利用する手もあります。筆者は本来、こっちの方が本業です。

【図表13】太陽熱の使い方

太陽熱は有効な技術ですが、使い方によっては効果的な「桂馬」といったところでしょうか。前回述べた通り、銀将の「断熱気密」・金将の「高効率設備」・飛車の「太陽光発電」が、ゆるぎない主役です。

回答9:冷房と太陽光発電の相性は最高。太陽光を屋根載せしていれば、夏の昼間に冷房をキンキンに効かせてもノープロブレム。

政府の施策は化石ビジネスへの忖度が伺える

疑問10:ゴチャゴチャ屁理屈をこねるな! 政府と大企業のいうことをひたすら信じていればいいんだよ!

筆者も大概はめんどくさがり屋なので、電気代の心配なんかしたくありません。丸投げして政府でも大企業でも、誰でもいいから解決してくれることを期待したいところですが、住宅の省エネを専門にする立場からは、そうも言っていられません。

これから150兆円ともいわれる膨大な投資が始まろうとしている、グリーン・トランスフォーメーション「GX」。てんこ盛りの中間整理が公開されていますが、筆者には一部の重工系企業への極端な偏重に思われます。しかも国債を20兆円も発行してまで、いまだ実現もしていない「ぶっ飛びイノベーション」に大枚を賭けようという計画です。

そんなに日本の化石技術が世界に誇れる素晴らしいものならば、みんなにブーブーいわれて面倒な国債なぞ当てにせず、堂々と世界の金融市場にアピールして、ガッツリ資金を稼いできてほしいものです。まさか、他の海外メーカーが早々に撤退してしまったので、ただ残存者利益を狙っているだけということはありえませんよね(「世界トップでも喜べない三菱日立」)。

現状のGXの中で、住宅の扱いはごく小さなもの。「カーボンニュートラルポート」などと突如出てきた壮大なインフラ計画の隅っこに、こじんまりと追いやられています。住宅の脱炭素化に必要な手段は完成されており、後は普及だけ進めればよいだけなのに、国民みんなに恩恵を届けるための計画は全く示されていません。

GXと似た言葉に、デジタル・トランスフォーメーション「DX」がありますが、日本における悲惨な実情を赤裸々にまとめた『アカン!DX』(日経BP 木村岳史著)という非常に面白い本があります。その表現を借りれば、現状のグリーン(笑)政策は、まさに「アカン!GX」です。