さらにUNWTOは「いつ、外国人観光客は2019年の水準に戻ると思いますか?」と、各国の観光の専門家にたずねたところ、ほとんどの地域で「2023年」とする回答が多かった。ところが、アジア太平洋地域だけは「2024年、もしくはそれ以降」とする回答が突出していた。

中国人観光客が来ないと…

なぜ、欧米とアジア太平洋地域では外国人観光客の回復にこれほど大きな違いがあるのか。観光マーケティングの研究が専門の立教大学観光学部の東徹教授は、こう説明する。

「海外旅行マーケットの動向はOD、つまりオリジン(出発地)とディスティネーション(目的地)、双方の関係でみなければなりません。つまり、受け入れ側がいくら『ウェルカム』と言っても、送り出す側がオープンでないと観光流動は生じません」

例えば、外国人観光客の回復が著しいカリブ海諸国を訪れる旅行者のほとんどは「おそらく、アメリカ人でしょう」と東さんは指摘。

「それに対して、アジア太平洋地域を訪れる外国人観光客は中国人や日本人といった近隣諸国の割合が多いと考えられます。しかし、『ゼロコロナ政策』を掲げる中国はもちろん、日本や台湾も観光目的の出国について慎重な姿勢をとっています。アジアでの外国人観光客の回復が思わしくないのはそのためでしょう」

ここで日本に話を戻そう。

2019年の訪日外国人旅行者は3188万人だった。そのうち中国からの旅行者は959万人で全体の30.1%を占める。台湾からは489万人、15.3%。香港からは229万人、7.2%だった。

「中華圏からの旅行者だけで50%超、韓国も加えると約70%にもなります。つまり、日本のインバウンドは完全にアジア頼りのマーケットになっている。それが現実です。だからいくら水際対策を緩和したところで日本にとって最大のお得意様が来ないわけですから、V字回復とはいきません。韓国からのツアーの申し込みが殺到しているという話も聞きますが、いま旅行会社の現場は相当混乱しているようです」