予算確定は秋以降だが、前年度の上院審議でも、最終的にはホワイトハウスの働きかけで原案通りに満額承認されはしたものの、11月の時点では同じく7割が削減された。

海兵隊グアム移転が実現しなければ、全体のシナリオが根本から大きく変わるわけだが、仮に米側が負担分を拠出できなかった場合、前述のようにその不足分を補う形で日本側が「金で解決」しなければならなくなる。

「中国を抑えるうえで、近すぎない場所にあるグアムへの移転は、米軍にとってきわめて重要です。しかし、そのためのコストの多くは日本に負担させようというのが本音でしょう。そもそも米側は、40億ドル全額を出すつもりはないと思いますね」

とは、前出の佐藤教授。

「9.11後しばらくは軍費拡大でどんどん予算が付けられていましたが、いまは軍事費も予算分捕り合戦の対象となっていますから予算付けは厳しくなっています。単年度予算として出してはいますが、残りの30数億ドルを今後3年間に出し切るとはとても思えません。また、グアムは米議会で投票権を持つ地元選出の議員がおらず、オブザーバー的な立場でしかありませんから、そういう意味でも予算付けは難しいと思います」(同)

仮に、菅政権の地元への働きかけが成功し、何らかのメリットを得て沖縄県民の反発が緩んだ場合、日本は共同声明を実現する過程で「海兵隊グアム移転の日本側負担額+α」と「辺野古の新基地建設コスト」に総額1兆数千億~2兆円の血税を放出することになる。

そうなれば、せっかく事業仕分けで切り詰めた歳出削減額「2兆円」が、米軍グアム移転と辺野古新基地でまるごと消えるかもしれない。普天間の米海兵隊に抑止力があるのであれば安い投資だが、逆に「抑止力なし」であれば、血税2兆円は途方もない無駄遣いとなる。