マーケッターの眼

かつてはデパートの得意技。ついで買いを誘う「噴水効果・シャワー効果」戦略で高収益。

衣料品専門店分野は、ユニクロの独壇場だ。ユニクロは全世代に支持されているが、とくに支持率が高いのは中高年層。20代の支持率が約5割であるのに対し、40~60代は約7~8割という驚異的な支持を集めている。逆にユナイテッドアローズやビームスといったセレクトショップは、中高年より20代の評価が高かった。一般論として若い世代ほどデザイン志向が強く、年齢を重ねるほどベーシック志向になるといわれるが、今回の調査でもその傾向が見て取れる。

レーダーチャートを見ると、ユニクロの強さは、「品揃え」「品質」「立地」「接客」で際立っている。とくに「品質」では、他店との差は圧倒的。かつては“ユニバレ”(ユニクロを着ていることを周囲に知られること)は恥ずかしいという印象もあったが、この結果を見ると、安かろう悪かろうのイメージは完全に払拭されたといっていい。

ユニクロは、目玉商品のつくり方・扱い方がうまい。たとえば東レと共同開発した機能性下着「ヒートテック」は低単価で、それだけが売れても利益は薄い。しかし、下着目当てで来店した消費者が、ふと目にした数千円のダウンジャケットをつい購入してしまうというような、関連購入を誘う品揃えも巧みだ。

メーカーとの共同開発や、噴水効果・シャワー効果(目玉商品による集客を、上や下の階の売り上げ増に波及させること)は従来デパートが得意としていた戦略だが、いまやユニクロにお株を奪われた格好だ。

業界が衝撃を受けた990円ジーンズを、低価格ブランド「g.u.」で展開した戦略も興味深い。別ブランドならば、万が一失敗してもユニクロ本体のブランドには傷がつきにくいのだ。いまや高評価を確立しているブランドだけに、冒険的な試みを別ブランドで展開するのは理にかなっている。

ユニクロ圧勝の中で、3位以下を大きく引き離した2位しまむらは健闘したといっていいだろう。レーダーチャートを見ても、「価格」の評価はユニクロに肉薄している。ただし、似たような価格帯の商品を扱っているにもかかわらず、「品質」の評価では水をあけられている。この差をどのように埋めていくのかが同社の課題だ。

今回は、ファストファッションの世界的ブランドであるGAPやZARA、H&Mが調査対象外だった。競合するこれらのブランドと、ユニクロやしまむらがどのような差別化を図っていくのか。気になるところだ。

※すべて雑誌掲載当時

(宇佐見利明=撮影 ライヴ・アート=図版作成 <マーケッターの眼>小野譲司/村上 敬=構成)