【青木】外資にもゴマすりいますよ。むしろトップダウンが大きい分、上層部へゴマをすらずに生きていくことは不可能かもしれません。

彼らが望むゴマすりの形は情報のリーク。情報は上にいくほど濾過されてきれいな情報しか入らなくなる。しかし元のドロドロした原液のような情報を知らなければ、イザというとき致命傷を負うのはトップですから。自分に有利な情報を上げたい部下と、多少のバイアスがあっても情報が欲しい上司。需要と供給の一致ですね。

【北島】ゴマすりが、うらやましいのは、彼らって大して仕事の能力がないから失敗を繰り返す。それなのに許される。私なんか失敗を一度でもしようものなら飛ばさてしまうのじゃないかとビクビクしている。

【姫川】外資には日本の派閥のようなものはあるの?

【青木】派閥のことを向こうでは「ファミリー」と呼んでいます。外資はトップの入れ替わりが早く、短いときは半年で社長が交代になる。トップが変わると、まず前政権の全否定から入るんです。ということは、社長が交代すれば前任者の息のかかった部下は全員飛ばされるということ。そこで誰の側についてきたかは、まさに死活問題です。

私も以前「君はどちらの味方なんだ!」と迫られたことがありますけど、そこでうっかり答えてしまったら最後、言葉が独り歩きしてしまいますから、「いや~難しいのでよくわかりません」といいつつうやむやに。

皆馬鹿ではないから、ゴマすりながらも、常に転職活動準備はしていますけどね。

【姫川】ゴマすれば成功するってわかっていても、同じ土俵に立ちたくないわ。

【速水】結局、女性と男性の求めているものって違うと思う。男は「とにかく出世したい」欲にとりつかれているし、それを口に出さない人ほどあやしい。だけど女性は案外職人タイプ。ゴマすってまで上に昇りつめようというモチベーションは低いかもしれない。

【北島】みんな冷静になってほしい。どう考えてもゴマすり全員に将来いきわたるポストなんてない。上司だって結果を求められれば、ゴマすり男を切り捨てなくてはならない日がやってくる。そのとき、どんな愛憎劇が繰り広げられるのかしら。

※すべて雑誌掲載当時

(小原孝博=撮影 PIXTA=写真)