住宅ローンの返済が滞った際に貸し手である金融機関が少しでも貸金を回収しようとして行うのが、担保にとっておいた住宅の競売だ。いま、その競売件数が増えている。2008年4月は4546件。それが1年後の09年4月には7697件と69.3%も増加した。それ以降も毎月7000~8000件前後で高止まりしている。
そうした状況について、競売市場をウオッチしている不動産競売流通協会の吉村光司代表理事は次のように見ている。
「バブル崩壊後に政府がとった景気対策のつけが回ってきた。旧住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)の10年間の固定金利型住宅ローンを利用した住宅購入が奨励され、その貸し出しが1998年にピークとなった。つまり08年から金利がリセットされて月々の返済額が跳ね上がり、家計が苦しくなった表れだろう」
確かに金利アップの影響は大きい。3000万円を35年返済で借り、当初10年間は2%だった金利が11年目から4%へアップしたとする。約10万円だった毎月の返済額は12万4000円へ、率にしたら24%もアップする。「それに借り入れから10年も経つと、子供が中学、高校への進学期を迎えて教育費も膨らんでくる。家計はダブルパンチをくらう形になる」とファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは指摘する。
実は、そんな“住宅ローン苦”のあおりで増えているのは競売物件だけではない。住宅ローンの返済が滞ったとき、貸し手の金融機関の了解を事前に得てから住宅を処分する「任意売却」も急増しているのだ。住宅ローン専門の相談所「任意売却119番」を主宰し、これまで3500件以上の相談にのってきたナレッジパートナーの富永順三代表は、「2008年まで1日あたり10件の相談件数だったものが、2009年12月には倍の20件へ増えた」という。
そして、吉村代表理事は先々について次のような厳しい見方をとっている。
「もし、2008年秋のリーマンショックで勤めていた会社が倒産してしまっても、しばらくは雇用保険で食いつなぎながら住宅ローンを払えていた。しかし、その雇用保険の受給も永遠ではない。そのタイムラグを勘案すると、競売物件が本格的に増えてくるのはこれからだろう」