評価すべきは「連続性」

インセンティブには、個人の給料だけでなく、そこに居続けるメリットが必要です。

たとえば、先ほどの保険営業の場合を考えてみます。営業成績に応じて給料を決めるという条件であっても、調子のいい月もあれば、悪い月もあります。

すると、成績と給料が乱高下するようになってしまいます。「今月は気合いを入れよう」「今月は調子が悪いから手を抜いて、来月は一気に頑張ろう」と、意識が1カ月ごとに途切れるようになります。

株を損切りするときのように「諦めるクセ」がついてしまうんですよね。

その先にあるのが、「この会社ではもうダメだ」と早々に離職してしまうことです。

大事なのは、平常心で毎日、毎週、毎月の業務に取り組むことです。つまり、「積み重ね」です。

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写真=iStock.com/metamorworks
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とはいえ、いたずらに「長く働けばいい」わけではありません。連続性も、行きすぎると弊害を生みます。「完全な年齢給」というのが典型例です。

年齢によって給料が100%決まる。すると、若いときは安い給料で我慢して、歳を重ねてから元を取るような思考になります。つまり、できるだけ会社にしがみつき、長く居ることがメリットになります。

長く居ることが「最大の目的」にすり替わってしまいます。

これによっても、「働かないおじさん」は生み出されます。そうならないために評価の「連続性」が必要です。継続していることを正しく評価に入れるようにします。

「働かないおじさん」を生み出さないたった一つの方法

では、評価に「連続性」を持たせるには、どうすればいいのでしょうか。メンバー全員が成長を目指し、「働かないおじさん」を1人でも生み出さないためには、方法は1つです。それは、「マイナス評価」を取り入れることです。

日本の多くの会社では、一度上がった給料が下がることはありません。

しかし、私たちの考えでは、これが成長を止める元凶だと思っています。

多くの企業では、評価制度は「加算方式」です。現状維持の人は「0点」、頑張った人にはその度合いに応じて「1〜4点」をプラスする。そういう制度がほとんどでしょう。

安藤広大『数値化の鬼 「仕事ができる人」に共通する、たった1つの思考法』(ダイヤモンド社)
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ただ、現実には、評価には「良い」と「悪い」しかないと思うのです。たとえば、おなかが空いたとしましょう。たまたま入った定食屋が「おいしければ、また行く」「そうでなければ、もう行かない」と、2つしか選択肢はありません。

つまり、評価に「ゼロ」はなく、「プラスか、マイナスか」に分けないといけないのです。そして、マイナス評価だった場合は、給料にも反映されるべきです。

この制度を取り入れると、「現状維持はヤバい」ということが個人にも認識できます。

「このままだとうちの会社はマズいよね……」そう思っていながら、自分たちの給料がそのままだとしたら、きっと危機感は訪れません。だって、自分の生活は現状維持ができているのですから。