なぜコカ・コーラを選んだか

コカ・コーラが、10年後、どれほどの業績をあげるかは多少の幅で予想が分かれるかもしません。しかし、長期にわたって投資を続けたときに、世界中の企業をリードできると確信しました。所有していなければならないと考えたのです。

そのコカ・コーラには、素晴らしい経営者がいますが、20年後には経営者が代わっていることでしょう。しかし、それでもコカ・コーラの優位は揺るぎないと思うから、投資をするのです。投資に際して大切なのは、ビジネスそのものです。最近投資したIBMにも同じことが言えます。経営者が素晴らしいうえに、顧客基盤が強固です。繰り返しになりますが、もっとも大切なのは、土台としている事業が自分の一生涯と考えてもいいぐらいの、今後何十年にもわたって持続可能な競争力を持っていることなのです。

もう一つの「安全域」についてです。ベンは、「堅実な投資の極意を3つの単語で言い表すという同様の難題に直面する今、われわれは勇気をふるって、それを『安全域(MARGIN OF SAFETY)』であると述べよう」と指摘しています。

(PIXTA=写真)

このシンプルな3つの単語を心に刻まない投資家は、膨大な損失を被ることになるでしょう。わかりやすく言えば、価値が1億ドルの事業を9900万ドルで買ってはいけないということです。時価に対して大きな安全域を有した価値ある銘柄を探すべく、誰よりも投資先を調べ上げ、慎重にタイミングを図るのです。

私の仕事とは、大きな安全域のなかで、「企業の内在的な価値」と、市場価格の差を利用して利益を得ること、それに尽きます。

(文中敬称略)

※すべて雑誌掲載当時

(佐藤ゆみ=インタビュー 山元雅信=取材協力 小倉和徳=撮影 AFLO、PIXTA=写真)