──2011年11月20日、「投資の神様」「オマハの賢人」と呼ばれ、世界第2位の資産家である大投資家のウォーレン・バフェットが、チャーター機で羽田空港に降り立った。81歳になるバフェットにとって、初めての日本だ。
翌21日、自身が出資するIMCグループの子会社である超硬工具・素材メーカー「タンガロイ」の新工場の竣工式に出席するために、福島県いわき市を訪れた。バフェットが語る投資成功の極意、日本の未来とは何か。
私の投資哲学の礎は、ベン(ベンジャミン・グレアム)が著した『賢明なる投資家』の第8章「投資家と株式市場の変動」と第20章「投資の中心的概念」に、ほぼすべてが書いてあると言っても過言ではないでしょう。この本は、人生最高の一冊です。
ベンは、私の人生にもっとも影響を与えた人物です。もちろん、父親をのぞいてですが(笑)。ベンの教えに従うことで、投資において損をする側ではなく、利益を得る側の一員となることが、私はできました。非常に優秀な投資家が流行の理論を追うよりも、平凡な投資家がベンの教えに従うほうが、より大きな恩恵にあずかれるはずです。
その2つの章には、それぞれ「ビジネスをそれ自体に注目すること」と、「投資の安全域」について書かれています。その2つの章を、1950年の初めからおよそ62年間にわたって、私は実践してきたのです。
まず「ビジネスをそれ自体に注目すること」です。多くのプロの投資家や学者たちが、毎日の株価に一喜一憂しています。しかし、株価やマーケットの動向を、毎日、毎週、毎月追うことで、投資が成功するとは、私は考えていません。株は、そのビジネスの一部分でしかないからです。注目すべきは、株価ではなく、事業そのものでなくてはなりません。常に株券ではなく、ビジネスを買うという投資姿勢が必要です。
企業の実態がマーケットや株価に反映されるまでに、ずいぶんと時間がかかってしまうことがあるかもしれません。しかし、事業の成功が一般に認知されるのにどんなに時間がかかろうとも、その企業が期待通りの高い成長をする限り、問題はありません。むしろ、認知が遅くなったほうが、投資家にとって都合がいい場合が多くあります。投資家にとっての「バーゲン価格」が続くわけですから。
また、多くのプロの投資家は、投資対象の過去の数値は気にするにもかかわらず、そのライバル企業が何をし、またどのような財務状態なのかを調査することすらしません。これは誤りです。大切なことは未来です。投資対象企業が今後どのような道を歩むのか、長期的な事業リスクに着目し、いかなる競争環境に置かれていくかを見極めることです。
その意味では、どのようなリーダーがその会社を経営しているかは、重要なことではありますが、最優先事項ではないかもしれません。ただし、卓越した事業を持つ企業のリーダーが、道を誤り、まったく魅力のない企業を買収しはじめたりした場合には、気をつけなければなりません。