しっかりした基盤を持ちながら、変化に対応できる柔軟性を持つ、「しなやかな組織」は、おおむねここに挙げた10の特徴を備えている。あなたの会社は、この基準をどの程度満たしているだろうか。

昨今、経営管理の世界で注目されている概念の一つが「しなやかさ(resiliency)」だ。しなやかな組織の最大の特性は、組織とそのパフォーマンスを前進させるために、決定権、情報、動機づけ要因、組織構造が互いに密接につながっていることだ。そのつながりこそが次に記す10の勝利の行動を実践することを可能にしている。

(1) 想像できないようなことを思い描く

しなやかな企業は、同業他社ではなく人間の想像力の理論的限界に照らして自らを評価する。想像できることなら何であれ実行できるという見方をとる。手本を探す際には「ベスト・イン・クラス」を超えたところに目を向け、競争に備えるためには市場と向こう5年間の展望と現状の背後にあるものを見つめる。転換期には必ず途方もないことを思い描き、足元に火がついた緊急事態をいち早く認識する。

(2) コミットメントとアカウンタビリティの文化を築く

コミットメントをどのように定義し、それをどのように決定権に置き換え、パフォーマンスをそれに照らしてどのように測定するか。

しなやかな組織では、コミットメントとそれに付随する決定権は、解釈で変わる類のものではない。石に刻まれたように確たるもので、誰にとっても明白なものだ。しなやかな組織のコミットメントは、十分かつ明確な説明責任という「金」によって裏づけられたハード・カレンシーである。

金によって裏づけられた通貨制度で人々が紙幣を受け入れるように、市場はしなやかな企業のコミットメントに投資する。そのコミットメントは、結果と同義であると知っているからだ。

日産自動車は、32のキーワードを明確に定義した「価値参照マニュアル」をすべての新人マネジャーに渡している。その中でコミットメントは「目標を達成する責任を引き受けること」と定義されている。目標は数値で表明され、それを達成することが誓約される。いったん誓約した人間は、よほどの事情がないかぎり、目標を達成しなければならない。達成できない場合は、結果を受け入れる覚悟をせねばならない。

(3) ゴールポストを3年ごとに動かす

しなやかな企業はたいてい、一つの状態にとどまることなく絶えず変身することで知られている。社員をやる気にさせ、組織を前進させるために、経営陣はゴールポストを一般に2~3年ごとに移動させる。

組織の構成単位は、彼らの前進を助けるために設計され、つなぎ合わされており、したがって誰もが適切な情報とインセンティブ、それに効果的な道筋を選ぶ権限を持っている。達成すべき目標は野心的で、組織とそこにいる人々に背伸びをさせるように(それでいて潰れてしまうほどには背伸びさせないように)設計されている。挑戦しがいがあると同時に手に負える範囲内の目標を設定するため、経営陣は最高の判断力と直感を働かせる必要がある。