日本社会はいつになったら「コロナ禍」を脱することができるのか。ライター・編集者の中川淳一郎さんは「日本のコロナ対応は一貫して高齢者重視。そのせいで子どもや若者が犠牲になってきた。若年層から学びや経験の機会を奪った罪は重い」という──。
職域ワクチン接種を受ける女性
写真=iStock.com/recep-bg
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「コロナ騒動」最大の被害者は子どもと若者

2022年3月26日をもって、アメリカのすべての州でマスクの義務化が終了する。また、欧州各国ではすでにコロナ関連規制の緩和や撤廃が進んでいる。だが、同時期に日本がやっていることは、世界的な潮流からの「逆行」という言葉がまさにふさわしい。実に情けなく、恥ずかしい状況である。

欧米各国の被害は日本よりはるかに甚大だったにもかかわらず、彼らは“withコロナ”の方向に舵を切った。対して、日本は欧米よりも被害が比較的少なかったというのに、まだ「コロナ、ヤバい」「絶対に罹患りかんしてはいけない」とやみくもに恐れ続けている。個人的には「ダメだ、こりゃ」という感想しか出てこない。

私は本稿で、日本のこれまでのコロナ政策および「コロナ感染対策禍」(決して“コロナ禍”ではない)の最大の被害者となった子どもたち、そして若者たちのことを明確に擁護しようと考えている。いまだ終わらない日本の理不尽なコロナ政策のせいで、若い彼らの貴重な時間がどれほど毀損きそんされたか、大人たちは真摯しんしに向き合う必要がある。

世界の潮流から乖離していく日本のコロナ対応

まずは、現況を簡単に整理しておこう。欧米諸国と日本の取り組みにどれほど乖離かいりがあるか、よくわかると思う。

・北欧各国ではモデルナ製ワクチンの若年層への接種禁止を決め、さまざまな国が3回目のブースター接種にも慎重姿勢を取った。実際、各国の接種状況を見ても、2回目より明らかに接種率は低い。

・一方、日本では若年層の接種に関する制限がなく、3回目についても「ファイザーでもモデルナでもどちらでもいいから、とにかくスピード重視で打てるほうを打て」と推奨。さらには4回目接種も夏までに準備完了と宣言し、政府分科会の尾身茂会長はその必要性を力説。モデルナは大相撲3月場所に懸賞旗を出し、自社のPRや3回目接種の促進に余念がない。

・「夏までに4回目接種の準備が整う」という宣言は、今夏に予定されている参議院選挙対策ではないかと考えられる。無能な岸田政権は「ワクチンをたくさん用意して、皆に打ってもらえば支持率が上がる」と考えている節がある。

・新型コロナ感染症をインフル並みの扱いにすると発表したイギリスに対し、日本は「まだ変異する可能性があるから時期尚早」と感染症の2類以上扱いを変えないまま。ただし、福井県の杉本達治知事からは5類変更の意見が出た。

・「入国に際してのPCR検査は受診不要」「ワクチン接種の有無は問わない」と水際対策を撤廃したイギリスに対し、「まだまだ検査数が足りない!」「3回目を早く打て!」「外国人は入れるな!」と絶叫する日本。

・ワクチンパスポートも各国で次々と廃止されているのに対し、「ワクチン・検査パッケージ」の新たな運用方法の検討に入った日本。

・マスクを外す流れにある(あるいはすでに外した)各国に対し、マスクを2歳児にも着けることを「推奨」した日本。

・自由に春を楽しむ各国に対し、日本では卒業式のマスク着用を義務化する流れ。山梨県はPCR検査陰性が卒業式参加の条件に。東京都は「今年も都立公園での花見を規制する」と小池百合子都知事が発表。理由は「まん延防止等重点措置の時期と重なる」から。

……このように、ザッと挙げただけでも、海外と日本ではコロナ対策に大きな違いが見られるのである。