年金をもらいながら路上で暮らす

もうひとつは某宗教団体が行っている研修だ。新宿や上野で炊き出しが始まるのを待っていると、「兄ちゃん、今日は研修行くかい?」とよく話し掛けられた。聞くと、「富士山の写真が載ったチラシを配っている宗教団体」の道場に行き、小一時間ほど研修を受けると1500円もらえるのだという。

研修の参加者を募っているのはその宗教団体の人間だ。研修に連れて行く人数のノルマがあるらしく、ホームレスに金を渡して頭数を確保しているのだ。彼らは炊き出しなどホームレスや生活保護受給者が多く集まる場所で待機しており、私たちに声を掛け、参加者を車に乗せて道場へと向かう。

さらに、ホームレス自身が研修の参加者を募っているケースもある。宗教団体の人間から人集めを委託されており、1人連れて行くたびに500円もらえる。1人連れて行き、自分も研修に参加すれば2000円の収入になる。

少数派だが古紙回収をしているホームレスもいる
筆者撮影
少数派だが古紙回収をしているホームレスもいる

そして、もっとも意外だったホームレスの収入源が年金である。上野公園に暮らして18年、月7万円の年金を受給しているというホームレスが話す。

「世間の人たちはすべてのホームレスが悲惨だと捉えているでしょう。もちろんそういう人もいるんですよ。昔はそういう人ばかりだったけど、つらい人は生活保護に行けるようになったんだから。今でもホームレスやっている人っていうのは、僕らみたいに年金もらっている人が多いんですよ」

國友公司『ルポ路上生活』(KADOKAWA)
國友公司『ルポ路上生活』(KADOKAWA)

普通に考えれば、月収7万円は生活保護を受けてもいい水準である。なぜ彼はあえて申請しないのか。

生活保護を受けると、月12〜13万円もらううち、少なくとも家賃・光熱費で6〜7万円の金が消え、自由に使える金が7万円を切るという現象が起きてくる。

「だったら路上でもいいから7万円自由に使えたほうが俺はいい」

そう考える人がホームレスになっているのだ。実際にホームレス生活をしていると分かるが、路上で暮らしながら月7万円の収入があれば相当リッチな生活ができる。

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