アメリカのミレニアル世代の70%が「社会主義に好意的」だとする調査結果がある。資本主義の超大国であるアメリカで、何が起きているのか。哲学者の岡本裕一朗さんは「収入が伸びないのに医療費も学費も高騰している。だから若者は2020年の大統領選で、社会主義者を標榜するバーニー・サンダースを支持した」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、岡本裕一朗『アメリカ現代思想の教室 リベラリズムからポスト資本主義まで』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

2016年3月11日、イリノイ州で行われたバーニー・サンダースの演説
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アメリカで社会主義に好感をもつ若者が増えている

2019年の10月に行なわれたインターネット調査(YouGov)の驚くべき結果が、世界中を駆け巡った。というのも、ミレニアル世代の70%が「社会主義者に投票するだろう」と回答したからだ。

興味深いのは、社会主義に対する考えが、世代によって大きく変わることだ。2020年の調査によると、ミレニアル世代(1981~96年生まれ)では、社会主義に対して好感をもつ人の割合が他の世代に比べ高く(43%)、しかも、資本主義に対して好感を持つ割合(43%)と比べても、社会主義の方が高いのだ。これは驚くべき結果ではないだろうか。現在、20代から30代のアメリカの人たちは、社会主義に対して好感度をもっている、となるからだ。

とはいえ、この調査の数字が、はたしてアメリカ国民全体の社会主義擁護を示しているかどうかには、注意が必要であろう。というのも、同じ調査を「ギャラップ」も2010年から2019年までの間に5回行なっているが、肯定的な意見は「35%から39%の狭い範囲にとどまっている」と言われるからである。

しかし、細かな数字を考えるよりも、最近の傾向については、ほとんどの記事がミレニアル世代ないし若い世代が、社会主義に好意的であることは一致していることに注目したい。