草食男子化(肉食女子化)の影響?

姉さん女房が増えた時期を「妻年上」の婚姻件数割合の毎年の推移(青線)を示した図表3で見てみよう。1990年代に入って姉さん女房が急増したことが分かる。

肉食女子はいつごろ現れたか

同図表には肉食女子化の指標の推移(オレンジ線)も同時に掲げた。用語として、草食化は、異性関係に淡白になることを指しており、肉食化はその逆であるとしよう。

筆者は、前著『なぜ、男子は突然、草食化したのか』(日本経済新聞出版社)の中で、日本生産性本部の新入社員に対する意識調査の結果を使って草食男子の出現について論じた。草食化は、実は、男女ともに進行している変化である。データによれば、実は、女性も草食化している。

従って、草食男子、肉食女子という用語は、男性との対比で、女性のほうが異性関係に積極的になってきているという相対的な状況変化を指している場合が多いという点に留意が必要である。図表3には、異性関係に積極的な割合の男女差(女性超過)を肉食女子化の指標として、姉さん女房比率の推移とともに示した。

姉さん女房比率の上昇と新入社員の意識調査結果の肉食女子化の時期が一致している点が興味深い。職場以外での生きがいとして異性関係を挙げる女性が男性を上回るようになったのは、姉さん女房婚の割合と同じように1990年代に「突如」なのである。サンプル数の関係もあって、意識調査結果のほうは毎年の変動が大きいが、目でならして頭の中で傾向線を描いてみれば、婚姻届に基づく人口動態統計のデータの動きと、ほぼ一致しているのである。

昭和が終わり平成に入った1990年代は「バブル残照期」とでも呼ぶべき時期であり、経済的にはバブルが崩壊したにもかかわらず精神的にはなおバブルのさなかにあった。ジュリアナ東京の狂騒は実は1991~94年のことだったのである。この時期に、肉食女子が現れ、戦前からの「男は積極的、女は控えめ」の気風は180度ひっくり返されたといえよう。

男女の精神年齢は、同一年齢であれば女性のほうが上という社会通念が正しければ、妻年上(姉さん女房)、あるいは夫婦同一年齢が半数近くになったということは、日本人の夫婦関係は、全体として、精神的には女性優位となったと考えることができる。

夫婦関係の変容と草食系男子の果たす役割について小説家の金原ひとみは次のようにコメントしていた。

「最近、若い夫婦を見ていると、仲の良い夫婦と仲の悪い夫婦、両極端に分かれているように感じる。仲の良い夫婦を観察していると、女性のタイプに一貫性はないのだが、男性は総じて草食系である事が分かる。(中略)細やかな気配りで配偶者を思いやるのは、かつては女性の役割だったが、会社でも家庭でも女性の支持がなければ生き残れない中、男にも思いやりや気遣いが求められるのだろう。今や草食男子は一つのモテジャンルのように語られているが、実際はこの世の中を生き抜く術として作られたスタイルなのかもしれない」(東京新聞2010年10月14日本音のコラム「夫婦」)。

男女共同参画社会では、「夫唱婦随」だけでなく「婦唱夫随」の夫婦も当然出てくるという見解であり、社会の変化に対応して、いずれは夫婦の年齢差も男女のどちらが上という決まりはなくなっていることを示唆している。