自社OS搭載のアップルカーは期待大

アップルの創業者スティーブ・ジョブズは、英雄のまま人生を終えることができた。彼も不安定なところがあって、何か言い出すと社内は混乱した。私はジョブズに会っているが、85年にアップルから追い出されたときだった。

彼からCEOを引き継いだティム・クック氏は、実に安定した経営者だ。彼を選んだことは大正解だった。iPhoneは「新機種が出るたびにつまらなくなる」と評価されるものの、会社の収益は目覚ましい。

アップルは自社開発のiOSとmacOSなどでパソコン、スマホ、タブレット、腕時計などの製品を固めてきた。新たに取り組んでいるのは、自社OSを心臓部とする完全自動運転の「アップルカー」だ。

試作車はすでにあり、24年の量産化を計画していると言われている。製造については、iPhoneの8割以上を受注した台湾の鴻海(フォックスコン・テクノロジー・グループ)、カナダの自動車部品メーカーのマグナ・インターナショナルと韓国のLGによる合弁会社などが名乗りを上げている。

ビジネスブレークスルー大学学長 大前研一氏
ビジネスブレークスルー大学学長 大前研一氏

ファブレス企業(生産施設を自社で持たない企業)のアップルは、発注先への要求が厳しい。初期のiPodやiPhoneでは、世界最強の部品サプライヤーをそろえていた。きめ細かい調査で最強の部隊をつくり、レベルを引き上げていくのがアップル流だ。ただしコストが折り合わないと、情け容赦なく、中国企業などに切り替えてしまうところもある。

アジアの製造業を熟知するアップルは、テスラに負けないほどEVで成功する可能性がある。1台10万円前後のスマートフォンに比べ、自動運転EVは少なくとも10倍以上の価格になる。成長戦略として参入せざるをえないのかもしれないが、安全性がキモであるモビリティ業界に本格参入したときに誰がアップルを経営するのか、という疑問も残る。

グーグルが保有する有望すぎる2大事業

グーグルは98年の創業から23年間、実にしたたかな経営をつづけてきた。無料の検索サイトで前述のアイボール・トラフィックを高め、ユーザーの関心を捕まえてターゲット・コマーシャルの高い広告効果を上げている。

今後のグーグルはさらに強くなるだろう。現在の検索サイトは、実はまだ中間段階だからだ。

ネット上にさまざまな専用サイトがあり、Eコマースならここ、レストランを探すならここ、ホテルの予約ならここと、各分野にポータルサイトがある。検索で専門サイトがトップにヒットすることも多い。しかし、グーグルは専門サイトをいずれ駆逐する動きに出る、と私は見ている。