「中国は搾取のない、圧政のない清らかな社会」と語った池田大作

1974年6月、池田大作は初めて中国を訪問する。

中国副総理の李先念や、中国仏教協会(これは民間の宗教団体ではなく、事実上の中国の国家機関である)幹部の趙樸初らが、池田を歓待。池田は北京大学や万里の長城、また各地の人民公社などを訪問し、行く先々で熱烈な歓迎を受け、また連日のように歓迎の宴席が設けられた。

当時はまだ文化大革命の真っ最中だが、池田はそうした中国の暗部にまったく目を向けず、帰国後に出版した『中国の人間革命』のなかで「ある識者」の語ったことを紹介するという体裁をとりつつ、「(中国は)搾取のない、圧政のない、清らかな社会」であるなどと評している。創価学会の中国への忖度は、この段階ですでに完成していた。

以後、池田をはじめとする創価学会、公明党関係者は、中国の核兵器や民族・宗教問題、民主化運動、また領土問題などに対する厳しい言及もないまま、「日中友好」のために中国を頻繁に訪れている。

また池田大作はその後、世界のさまざまな国を「民間外交」として訪ね歩き、勲章や名誉称号などをもらい集めていく。

そうした姿勢の末に現在、創価学会内では「ガンジー・キング・イケダ」なる言葉が流通する事態になっている。池田大作とは、マハトマ・ガンジーやマーティン・ルーサー・キング牧師と並ぶ、世界を代表する平和主義者だというのだ。

池田は1960年に創価学会会長に就任して以降、断続的に海外を訪問してはいる。しかし、当初は学会の海外組織づくりの作業や、文化人の交流などを主としたものだった。具体的な外国政府との“外交”を伴う創価学会の事実上の“平和路線”の第一歩とは、日中国交正常化だったのである。

公約でも具体的な課題には言及していない

今年4月、自由民主党、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反での各党によって立ち上げられた「人権外交を超党派で考える議員連盟」(人権外交議連)。

事実上、香港の民主派や、ウイグル、チベットへの弾圧を続ける中国への牽制を最重要目的のひとつとして立ち上げられたこの「対中批判議連」に、公明党は関わることを避けた(最終的に公明党参院議員・三浦信祐が加盟したが、党代表・山口那津男は「個々の議員の自主的な判断で対応するもの」とし、党全体としては賛同していないと表明)。

また今年6月に自民党が国会での採択を準備していた、ウイグル弾圧を念頭においた中国への非難決議も、「公明党の反対で流れた」とする報道が、主要各マスコミによって行われた(公明党は公式には「決議を止めた話はまったくない」としている)。

フランス・ストラスブールで行われた、ウイグルにおける大量虐殺に対するデモ行進
写真=iStock.com/AdrianHancu
※写真はイメージです

かくなる創価学会の中国への忖度は、日中国交正常化交渉の時期から約50年、ほとんど変わることがない。

もちろん冒頭で示したように、公明党は今回の衆院選への公約として、中国への批判を盛り込んだ。ただし、中国の人権状況を憂慮する項目に、チベット、ウイグル、香港といった、具体的な課題の固有名詞は記載されておらず、中国そのものはあくまで「一衣帯水の隣国」だと言っている。どこまで本気なのかは疑わしい。