歌を歌うファッションモデル

日常生活に欠かせないコミュニケーション領域のロボットはどうか。両手を上げて目や口を大きく開け、びっくりした様子で「驚き」の感情を表す。かと思うと、両手を口元に持っていき、うつむきながら「悲しみ」の表情を見せる。早稲田大学理工学術院の高西淳夫教授のグループと、北九州市にあるロボット開発ベンチャーのテムザックが開発したヒト型二足歩行ロボット「コビアン」は、人間の感情を表情と身体で表現できるロボットとして話題を呼んだ。

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産業技術総合研究所が開発した女性ロボ。ファッションショーの案内や歌も歌う。

顔にはいくつもの電動式モーターを組み込み、まぶたやまゆ毛の動き、くちびるの開閉など顔の表情を自在に動かせるようにした。その結果、「喜び」「悲しみ」「驚き」「怒り」「恐れ」「嫌悪」「困惑」の7つの感情を表現できる。

これまでのヒト型ロボットは、どちらかというと機械的な冷たさを感じさせるという指摘があったが、それでは将来、家庭で利用するサービスロボットとしてはふさわしくない。コビアンを開発した高西教授はその狙いを次のように話した。

「例えば医療や介護の現場に入っていく場合、表情の豊かさによって人とのコミュニケーションがうまく取れたほうがメリットが大きい。私はコビアンのようなロボットを“パーソナルロボット”と呼んでいます。ロボットへの感情移入の限度を超えるとおかしなことになる危険性があり、むしろ人間とそっくりでないほうがいいと思ってつくりました」

「歩く仕草がモデル並み」のPR文句につられて、ヒト型ロボットを開発した産業技術総合研究所(茨城県つくば市)を訪ねた。この女性ロボット「HRP-4C」は、身長158センチ、体重43キロで、日本人の若い女性の平均値を基にサイズや関節の位置が設計されている。ファッションモデルが歩く様子を計測してコンピュータに取り込み、42個のモーターを内蔵して二足歩行を制御しているのだ。

これまでのロボットに比べ人間に極めて近い動作をこなすことが可能になり、ただ前に向かって歩くだけでなく、横に向きを変えることもできる。音声認識機能も持っているので、ブルートゥースを使って「名前は」と呼びかければ答えるほか、「ほほえんで」と指示するとにっこりほほえむ。歩行や動作にまだ多少ぎこちなさは残るものの、ファッションショーの案内役や、歌を歌うロボットとしてすでに“デビュー”を飾っている。