図を拡大
ロボット市場規模予測

手塚治虫の漫画「鉄腕アトム」が世の中に登場して、半世紀の歳月が流れた。いまだアトム並みのヒト型ロボットは実現していないが、ロボット技術の裾野は確実に広がってきている。日本が世界トップの産業用はもちろん、未来の移動体、医療介護、コミュニケーション、といった分野に、多種多様なロボットが誕生しつつあるのだ。日本各地のロボット開発現場を訪れながら、わが国のロボット産業が明らかな黎明期を迎えたことをはっきりと意識した。それは、ロボットが産業化するのではなく、あらゆる産業がロボット化していく新たなイノベーション(技術革新)の萌芽のようにも思える。

アシモから生まれた新しい電動式一輪車

日本の自動車業界が未来の移動体の分野に進出している。ホンダは、二足歩行ロボット・アシモのバランス制御技術を応用し、乗り手が座ったまま移動できる電動式一輪車「U3-X」を開発した。

写真を拡大
ホンダの電動式一輪車は、座ると時速約6キロの速さでどの方向にも進む。

この一輪車はひょうたん形で、ヒトが乗っていない状態でも倒れずに自立している。自転車のサドルに当たる部分に乗り手が腰掛け、行きたい方向に体を傾けると、前後はもちろん、360度どの方向にも動く。傾き具合で、進む方向だけでなく速度も調節できる。高さ65センチ、重さ10キロ弱、最高速度は約6キロでヒトの早足に相当する。バランス制御装置を内蔵しているので、転倒の心配はなく、初心者でも簡単に乗りこなせる。1時間半のフル充電で、約1時間の移動が可能だ。

これまでのモビリティ(移動体)は基本的に前後の動きが中心だったが、この一輪車は左右にも斜めにも移動できる点に特徴がある。縦に回転する大きな車輪と、横向きに回転する小さな車輪を数十個搭載し、大小を組み合わせてあらゆる方向への動きを可能にしたのがミソで、「新しい車輪機構に関しては、数十件の特許を出願している」と広報部は話す。

商品化の時期は未定だが、高齢者向けの手軽な乗り物やレジャー施設での移動手段のほか、重い荷物を載せて運ばせる運搬手段としての利用が検討されている。すでに米国発の電動式モビリティ・セグウェイが世界的に有名だが、U3-Xとの違いをホンダは次のように説明する。

「セグウェイは屋外での利用に限られ、オフィスや家庭空間に入ってくるのは難しい。それに対し、U3-Xは室内での移動がかなり自由にできるので、ヒトの移動だけでなく、モノの運搬など広範囲の応用が可能になるでしょう。アシモの当面の目標が家事手伝いにあることから考えても、オフィスや家庭での利用がまず最初に視野に入ってくると思います」