2011年12月12日(月)

グローバル化のお手本「味の素」300基幹人材の選択法

PRESIDENT 2011年12月5日号

著者
溝上 憲文 みぞうえ・のりふみ
ジャーナリスト

溝上 憲文1958年鹿児島県生まれ。ジャーナリスト。明治大学政治経済学部政治学科卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』(文春新書)で2013年度日本労働ペンクラブ賞受賞。主な著書に『隣りの成果主義』『超・学歴社会』『「いらない社員」はこう決まる』『「日本一の村」を超優良会社に変えた男』『マタニティハラスメント』『辞めたくても、辞められない!』『2016年 残業代がゼロになる』など。近著に『人事部はここを見ている!』(プレジデント社刊)がある。

執筆記事一覧

ジャーナリスト 溝上憲文=文
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売り上げ1.5兆、世界の食品メーカートップ10を目指す

国内市場依存型の代表格とされる日本の食品産業。その中にあって早くから海外進出を果たした味の素が、日本発の本格的グローバル経営に向けて舵を切った。

同社の海外拠点は約70法人、120カ国に広がり、海外売上比率は約30%、利益比率は59%を占める。押しも押されもせぬグローバル企業だが、2016年度には売上比率50%超、利益比率最高75%にまで引き上げ、売上高1兆5000億円以上を達成。世界の食品メーカートップ10入りを目指している。

実現するために事業戦略と並んで重要なのが、国境を越えて世界の拠点をマネージする経営システムの構築だ。日本企業の海外進出の歴史は古いが、最初は現地の販売代理店や製造会社に販売・製造を委託する方式に始まり、続いて自社の販売・生産拠点を築くという流れをたどってきた。

しかし、経営的には各地域・国のトップが強い権限を持ち、社員のほとんどは現地の人間で構成され、人事制度も各国独自の仕組みで運用されてきた。子会社とはいえども本社は現地のトップとのみ接点を持ち、戦略やプロセスをあまり共有することなく、基本的には結果だけを求める関係である。

あるいは日本のものづくり文化を現地に移転するために日本流の人事制度を導入し、生産拠点のトップ層を日本人が占め、本社と連携しながら経営する仕組みをとる企業もある。しかし、近年はアジアなどの新興国市場をはじめ世界市場での躍進を目指し、本社の開発・生産・販売などの事業部門ごとに現地法人をより積極的かつ効率的に活用しようという動きが加速している。

味の素も例外ではない。現地法人の設立に際しては日本人のトップを配し、味の素流の人事制度を導入したところもあれば、M&Aなどによって買収した会社の制度を維持しているところもある。

西井孝明執行役員人事部長は「世界を一つのマーケットと見なし、国を越えたビジネスを事業グループごとに展開するようになってきている。各地域や国のトップの権限は強いが、事業本部長なりグループ企業のトップが事業戦略に基づいて現地の機能を動かす形に変わっている」と指摘する。

つまり各地域・国のトップの権限が強い一方、本社の事業トップ主導で現地の各部門の社員を使いこなすというマトリックス型組織への移行だ。じつは現在の日本のグローバル企業のほとんどがこうした経営スタイルをとっている。

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