「最も深刻な課題」と言いながら対中政策はちぐはぐ

パンドラの箱から飛び出た問題②は、中国である。

バイデン大統領は8月31日、「われわれは中国と深刻な競争をしている」「ロシアにも多方面からの挑戦を受けている」「サイバー攻撃と核拡散に直面している」と述べた。これこそアメリカ外交のこれからの課題というわけである。

しかし、中国をもって「最も深刻な課題」というなら、アメリカの地政学的戦略は全く説明がつかない。習近平国家主席の地政学的大戦略は「一帯一路」である。これは、太平洋の彼方から中国を睥睨へいげいするアメリカに対し、ユーラシア大陸を陸と海の双方から中国の後背地として戦うという戦略である。

アフガニスタンは、陸のシルクロード「一帯」のへそにあたる戦略的位置にある。アメリカのブーツが消えた後のアフガニスタンに直接的に影響力を行使する大国は、中国とロシアである。その中国をもって「最も深刻な課題」と言いながら、その中国が最も影響力を拡大したい地域の核心地をほとんど無傷でその影響下に差し出すという地政学的戦略論とは何なのか。

星条旗とホワイトハウスのサイン
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日本の中国への対応もよく分からない

対中問題では、もう一つ筆者には分からない点がある。

日本で提起されている大部分の論調は「アフガンの事態の評価はともあれ、アメリカがこれから正面から中国に向かうことはいいことだ」という論調である。

しかし、日本でいうアメリカの対中国への関心は、「一路」という「海のシルクロード」への関心であり、だからこそ、日米による「インド太平洋」戦略への高評価と軌を一にしているのである。

台湾にせよ尖閣にせよ、いずれも「海のシルクロード」の問題だから、そういう思考が出る理由がないとは言わない。だが、相手の習近平国家主席から見れば、「一路」に偏した日本の対中国戦略は、あまりにも部分的なものとしか見えないのではないか。

自爆すら厭わない過激集団はまだ根を張っている

第3にパンドラの箱から飛び出たのは、③国際テロ問題である。

何よりもカブールでタリバン政権が統治の初期形態を作り始めようとした矢先の8月26日、カブール国際空港でISの支部組織「イスラム国ホラサン州」による自爆テロが発生、13人の米兵とタリバンを含む多数のアフガン人の命をうばった。27日米国防総省は、アフガン東部ナンガルハル州で無人機による越境攻撃で空爆を行い、テロの計画立案者ら2人が死亡したと発表。

8月31日の演説でもバイデン大統領は「ソマリアにおけるアル・シャバブ、シリアやアラビア半島におけるアル・カイダ支持者、アフリカ・アジアに拡散するISIS」をこれからのテロの脅威として挙げている。