コロナ対策を続ける人と軽んじる人

しかし、メッセージが届かなくなったのは、これだけが理由ではない。もちろん国民の側にも問題がある。

冷静に周囲を見てみると、長引くコロナ禍のなかでもずっと外出自粛を続け、三密を回避するなど、きちんと感染対策を採り続けている人もいることは事実である。お盆休みの間も2年連続で帰省を控えたという人は多いだろう。事実、新幹線の自由席の混雑度は20~40%程度であったという。

その一方で、航空機の予約状況が昨年の120~140%であったということから、特に遠方に実家のある人や連休を使って旅行を楽しみたいという人は、飛行機を利用した人も少なくなかったということである。

また、8月13日には、新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、「外出を5割程度削減してほしい」と要請したが、その直後の週末、東京都内の人出は3割程度しか減少しなかったというデータもある。

つまり、感染防御策をきちんと講じている人と、それがだんだんと疎かになっている人がいるということだ。この事実をきちんと押さえておく必要がある。

すると、次に問うべきは「では、なぜコロナ対策を続ける人と軽んじる人がいるのか」「その両者を分けるものは何か」という問いである。

開催中の五輪の垂れ幕が掲げられた歌舞伎町を歩く人たち。東京都では7日、新たに4566人の新型コロナウイルス感染が確認され、4日連続で4000人を超えた
写真=時事通信フォト
開催中の五輪の垂れ幕が掲げられた歌舞伎町を歩く人たち。東京都では7日、新たに4566人の新型コロナウイルス感染が確認され、4日連続で4000人を超えた=2021年8月7日、東京都新宿区

「統制の位置」で人々の心理を読み解く

ここで私が注目したのは、「統制の位置」(locus of control)という心理学の概念である。

これは、自分自身の人生に影響を与える状況を自力でコントロールできるとどれだけ強く信じているかを示す概念である。

これは心理学の研究のなかでは、いささか古い概念で最近はあまり注目されることがなくなったが、コロナ禍での人々の行動を読み解くうえで、非常に興味深い概念だと思っている。

先に少し紹介した私の調査では、コロナへの不安やそれに関する心理的要因に関するデータも同時に収集していたのだが、それをあらためて分析してみると、興味深いことがわかった。それは、コロナへの不安の大きさと「統制の位置」に有意な相関があったということである。