官僚に言われると金融機関は従わなければならない

ここで、変だと思わないといけないことが2つある。1つは、官僚も金融機関も自分が不動産価格の乱高下の主役であるのに、不動産への見識が全くと言っていいほどなかったことだ。自分が1億円貸して買わせた土地を、次買う人に5000万円しか貸さなければ価格は大幅に下がるしかない。不動産を手元資金だけで買う人はほぼいないものだ。

もう1つは、官僚から言われると金融機関はもれなく従わなければならないということだ。今は、大蔵省は財務省と金融庁となった。金融機関を指導する立場は金融庁である。その厳しい監督・管理は「都銀13行」「大手20行」と呼ばれた各行が3つのメガバンクに再編するほどの力を持つ。

銀行の看板
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです

値上がりの要因は2013年からの金融緩和

逆に不動産価格が上がる時の要因は決まっている。不動産にこころよく金融機関がお金を貸してくれる時だ。1億円の不動産を買うなら、9割程度ローンを借りるものだ。会計が分かる人なら、貸借対照表上の資産1億円に対して、債務9000万円+自己資金1000万円でバランスすることになる。つまり、債務が引きやすいと資産はインフレするし、債務が引きにくいと資産はデフレするのだ。

最近の値上がりは、2013年に始まる。アベノミクスの3本の矢の1つ目は金融緩和だ。金融緩和すると、日銀から市中の銀行に大量の資金が貸し出される。銀行はその借入金を誰かに貸し付けないと金利分だけ損をする。そうした時は、決まって不動産への貸し出しが増える。担保が取れるからだ。つまり、金融緩和は資産インフレを必ず招くのだ。それに加えて2013年9月に東京がオリンピック招致に成功する。オリンピックまでは建設需要が旺盛になることは必至で、建築単価が上がるからこそ不動産価格が上がるというシナリオはまんざら嘘ではない。