医療関係者の接種が終わっていないのに、高齢者接種始めたチグハグ

では、日本ではいったい「何のために」ワクチンを接種しようとしているのでしょうか。ワクチン接種の目的を、政治家も、専門家も、誰も語りません。

目的がよくわかっていないから、医療関係者の接種が遅れ、医療関係者が打ち終わっていないのに、高齢者にワクチン接種を行うというちぐはぐなことが行われました。

医療関係者を安全にすることで、コロナ対応をできる人、ワクチン接種をできる人を増やすという目的が忘れられたからでしょう。病床確保のためには入院患者のワクチン接種も迅速に行わないといけないのに、それも忘れられました。ワクチンを優先接種する代わりにコロナ患者をきちんと引き受けてくれというメッセージもありませんでした。結果的にちょうどワクチンの接種時期に各地で医療崩壊になるような病床不足が問題になりました。

「感染しにくくなる、重症化しにくくなる」では打つ気になれない人々

ワクチンを接種しても、新型コロナに感染しにくくなる、重症化しにくいというメリットしかないので、ワクチンの副反応が報道されればされるほど、ワクチン接種を行わない人が増えることが考えられます。

このままでは、ワクチン摂取率はあるところでストップしてしまうでしょう。万が一、ワクチン接種率が5割程度でストップすれば、市民生活を取り戻すことはできません。

こうした事態を避けるためには、ワクチン接種に強制力を働かせるか、ワクチン接種のメリットを増やすしかないはずです。ワクチン接種のメリットを増やして公言すれば、「じゃあ接種するか」という気になる人も確実に増えます。しかし、そのようなことが行われる気配すらありません。

ワクチン接種が急速に進んだイスラエルでは、ワクチン接種を証明するパスポート「グリーン・パス」を発行し、自由に出歩いて会食もできるメリットを、ワクチン接種者に与えました。現在イスラエルでは、ほぼ制限のすべてが解除されたため、グリーン・パスも必要なくなりました。

和田秀樹『コロナの副作用!』(ビジネス社)
和田秀樹『コロナの副作用!』(ビジネス社)

「何のために何をするのか」を明確にして説明し、その結果、「こうしたことが実現できます」というメリットまで提示することが、政策を決め、新型コロナ対策を決め、ワクチン接種を主導する政治家には求められます。

しかし現状では、目的と手段が不明確なまま、緊急事態宣言が発令、延長され、ワクチン接種が混乱の中で、進んでいます。

感染者が増えたら緊急事態宣言を発令し、減ったら解消し、また増えたら発令し、減ったら解消する。こんなことを、いつまで繰り返すつもりなのでしょうか。抑制と解放を繰り返すだけでは、根本的な打開策にはつながらないことは、誰の目にも明らかでしょう。