眠くならないための2つのポイント

疲れない、眠くならない、昼食のとり方のポイントは二つ。

一つめは、食べる前にコップ1~2杯の水を飲むこと。二つめは、「腹六~八分目」の量を、できるだけゆっくりよく嚙みしめながら食べること。それだけで、昼食を疲れない、眠くならない「力めし」に変えることができる。でも、それはなぜなのだろうか。

水を飲む老人
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食事をすると、誰でも副交感神経が優位になる。けれども、副交感神経が優位になるのは、じつは食後から。食事中は、「咀嚼する」という行為も含めて体が活発に動いているので、体にとっては運動しているときと同じで交感神経が優位になる。

さらに、「嬉しい」「おいしい」「楽しい」というメンタルも作用して、交感神経がますます優位になっていく。つまり、食事をしている最中は、クルマにたとえれば、アクセル全開の状態。昼食をとっている最中に眠くなったという人は、ほぼいないはずだ。むしろ、食べている最中はアクセル全開で、やる気も全開である。

けれども、二つのポイントを押さえずに、ただ無意識に食べたいものをがつがつ早食いしてしまうと、食べ終わって胃腸などの消化器官が働き出した途端にさっきの元気はどこへやら、ガクンと疲れて眠くなってしまう。

それはひと言でいえば、食事をすることで交感神経が一気に優位になる、けれども食後に消化器官が動き出すことで、一転、副交感神経が優位になる、この「急転換」が、昼食後の疲れと眠気の最大の原因なのだ。

とすれば、自律神経の急転換を防げれば、心身のパフォーマンスを維持したまま、疲れも眠気も防ぐことができる。そのためのポイントが先の二つなのだ。

「おいしい」という感覚は最初のふた口で満たされる

「おいしくない」食事ほどの害はないのだが、やはり、炭水化物のとり過ぎは、「力めし」という意味でも好ましくない。

朝、昼、夜、3食全部、炭水化物をがっつりとってしまうと、私の経験上でも、体重のコントロールが難しくなる。3回の食事のうち、炭水化物をしっかりとるのは1回だけにするなどの工夫がおすすめである。

そのほうが断然、午後の仕事がはかどる。逆に、短時間でがっつり炭水化物メインの昼食をとると、交感神経の働きが急上昇し、食後、そのリバウンドで副交感神経が一気に優位になってしまう。すると、疲れて眠くなり、午後は使いものにならないという結果を招いてしまう。

理想は朝、ごはんでもパンでも炭水化物をしっかりとって、昼は軽めのものをゆっくり食べて腸を穏やかに動かすという食べ方だ。とはいえ、昼食も、炭水化物がっつりの好きなものを食べたいという日もきっとあるだろう。

カレーライス、かつ丼、そば、うどん、ラーメンは私も大好きだ。どうしてもそういうものが食べたくなったら、我慢することなく食べている。ただ、少しだけ工夫をしている。たとえば、そば、うどんだったら、最初から麺を半分にして、スープは飲まない。

カレーライスも同じで、食べる前から、ルーもごはんもお皿のなかで、半分に分けておく。大学病院の学食で、日替わり定食を頼むときでも、ごはんは最初から半分に。いまでは、学食の人たちも、私の顔を見たら、言わなくてもごはんを半分にしてくれるようになった。

食べる前から、半分に分けておく。この方法は、一見、強い意志が必要のように思われるが、やってみると、じつはまったくそうではない。なぜなら、「食べたい」「おいしい」という感覚は、じつは最初のひと口ふた口で満たされているもので、あとは、「全部食べなくては満足できない」という錯覚で食べているだけだからだ。