抜群の成果を上げられる人は、どんな言葉遣いをしているのか。LINE執行役員、ZOZOコミュニケーション室長などを務めた田端信太郎氏は「仕事はもちつもたれつの関係性でできている。『お願い上手』の人は、真の意味で成果を上げることができる」という――。

※本稿は、田端信太郎『部下を育ててはいけない』(SB新書)の一部を再編集したものです。

「田端大学」塾長の田端信太郎さん
撮影=榊智朗
「田端大学」塾長の田端信太郎さん

人間は短所に目が行きがちな生き物だ

人間というのは、とかく短所に目が行きがちな生き物である。

ある中小企業の経営者がコンサルタントから「あなたの会社の良いところを10個挙げてください」と質問されたところ、挙がってきたのはわずかに2、3個で、「うちの会社にいいところなんでありませんよ」と音を上げてしまった。

ところがコンサルタントが質問を変えて、「では、あなたの会社のここが弱い、というところはありますか?」と尋ねると、「いい人材がいない」「知名度がない」「これという技術がない」と次々と挙がってきた。私たちがいかに「自分に足りないもの」に意識が向きがちであるか、よくわかる。

自社の弱いところを認めることは大切ではあるが、「いいところなんか何もない」と経営者が言い切るような会社に、果たして明るい未来はあるのだろうか。

この経営者と同様に、「自分にはいいところなんか何もない」と思い込んでいる人は少なくないし、上司が部下を見る時も長所より短所ばかりに目が行き、ついつい注意したくなるということは多いだろう。

「言いがかり」に屈する必要はない

こうしたタイプの上司は部下や取引先などがミスをすると、ここぞとばかりに責め立てる。私がかつて営業部隊を率いていた時、広告を掲載したにもかかわらず期待通りの成果が得られなかったからと、まるで当社に落ち度があるかのように責め立ててくるお客さまがいた。先方の言い分はこうである。

「お前ら、契約した通りの義務を果たせていないじゃないか。債務不履行だ。このままだったらお金は払えない」

これは明らかに言いがかりだ。

自分たちが事前に約束したことができていないとか、広告に大きなミスがあったということであれば、たしかにこちらに落ち度がある。その場合は金銭上の問題が生じるのも仕方のない。しかし、契約で定めた「やらなければならないこと」を、こちらがすべてやっている場合、期待通りの効果が出なかったとしても全責任を負う必要はない。

たとえば、商品自体に魅力がなかったとか、システムに問題があったとか、お客さまの側にも大きな原因があるにもかかわらず、一方的に「お前たちの落ち度だ、お金は払えない」と責め立てるのは明らかに誤りである。このような場合はたとえ相手が上得意様であったとしても、「御社とはもうお取引はしません」と以後の契約を打ち切ることになる。

これと同様、相手の落ち度を一方的に責め立てるリーダーは二流以下だ。そんなやり方をすれば、相手も売り言葉に買い言葉でケンカ腰にならざるを得なくなるし、たとえケンカに勝ったとしても、わだかまりが残る。

このような勝ち方をしても、得るものは少ないのである。