「親の面倒は子供が必ずみるべき」という固定観念を払拭したい

遠藤さんがこのビジネスを始めたのは、5年前だ。当時は身寄りがなく、比較的裕福なおひとりさまの高齢者を対象にした「終活サポート」を行っていた。しかし、事業を始めてみると、相談者の多くは本人ではなく、親族との関係に苦しんでいる子供たちだった。そのため遠藤さんは、彼らのサポートにまい進することになった。

「先日携わったのは、親の介護から納骨まですべてわれわれにお任せというケースでした。子供が来たのは、介護施設の事務手続きだけ。親が亡くなっても子供は姿を現さなかったので、亡くなったことだけは確認してもらいましたが、葬儀から火葬まで全てを私たちで代行したんです。われわれはそれぞれの親を捨てたいという子供の事情を深く聞くことはしないのですが、推察するにこの方は、いわゆる『毒親』のケースだったと思います」

それでもまだいいほうだ。子供とはメールのやり取りだけで、介護から納骨まで代行し、あっさりと完結するということもある。

「完全に親を捨てたいという人もいますが、介護から一時的に離れたいという人も多いんです。あと、自分や子供との生活で手いっぱいだったり、本人が病気で親の面倒をみられないというケースもある。子供には子供の「親をみられない事情」もあるんですよ。われわれは、親の面倒は子供が必ずみるべきという固定観念を払拭ふっしょくしたいと思っています」

親から迷惑をかけられたなら、後始末を誰かに任せてもいい

親の死後も安泰ではない。葬儀、お墓はどうするのか、納骨はどこに行うのか。また、実家の遺品整理など、片づけなければならない問題が山積しているのだ。

例えば遠藤さんは、親と遺恨があり、親の納骨には行きたくないという子供の要望を受け止める。そして、先祖代々の菩提ぼだい寺と3時間にわたって交渉を重ねることもある。「なんで子供が来ないんだ」と怒鳴る住職との仲裁に入り、納得してもらうまで話し合う。希望すれば、墓じまいのサポートも行う。

墓石の前に立てられた花
写真=iStock.com/kazunoriokazaki
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「自分たちが間に入ることで、子供の側にはそういった心労をなるべく減らして、最後に親が亡くなったときに『あぁよかった』という気持ちになってもらいたいと思っています。だから、私たちのような第三者の存在が必要とされるのでしょう。親から迷惑をかけられたとか、暴力を受けたんだったら、その後始末を誰かに任せてもいい。親はその前段階を放棄したわけだから、それがツケとして返ってきているだけ。だけど、日本の行政とか世間の倫理感は血をすごく大事にする。そのあつれきで、子供は苦しい。それなら私たちはその負担を減らすために働けばいいと思っています」

そう語る遠藤さんの言葉に、高齢の親を持ち、虐待の当事者である私自身、深く救われた気がした。