最終的には風邪のコロナウイルスと同じ病原体になるはず

いまのところ、新型コロナウイルスは中国の山奥の洞窟に生息する特定のコウモリの体内に生存していたという説が有力だ。新型コロナウイルスは変異することで、コウモリのウイルスから人のウイルスへと変わり、人間界に定着していくのだと、沙鴎一歩は考えている。イギリスや南アフリカ、ブラジルで感染力の強い変異ウイルスは、人間界の環境に適したウイルスに変化しつつあるのだと思う。

たとえば、スペイン風邪(1918年)やブタ由来のインフルエンザ(2009年)で知られる新型インフルエンザは鳥インフルエンザが変異したものだ。鳥インフルエンザのウイルスは、もともとトリの腹中で増殖する腸管ウイルスで、それが人の喉や上気道で増殖できるウイルスに変異することで、やがて季節性のインフルエンザウイルスに生まれ変わったと考えられている。

繰り返すが、新型コロナの変異ウイルスは出現して当然であり、今後も必ず出てくる。新型コロナは変異を重ね、最終的には私たちの身の回りに常在する風邪のコロナウイルスと同じ病原体になるはずだ。ここは冷静に対処していくことが大切で、防疫もこれまでと変わらない。

「政府も強い危機感を持て」と産経社説は主張するが…

1月24日付の産経新聞の社説(主張)は「コロナ変異種 国主導で市中感染対策を」との見出しを掲げ、冒頭部分でこう訴える。

「静岡県の川勝平太知事は19日に、県独自の『感染拡大緊急警報』を出した。政府も『緊急事態』に相当する強い危機感を持って、変異種の市中感染対策に万策を尽くすべきだ」

変異ウイルスが発生した静岡県が警戒を強めるのは当然だが、「強い危機感を持て」と政府にまで強く求めるのはどうか。変異ウイルスに対する感染対策はこれまでと変わらない。しかも緊急事態の宣言中である。冷静な対応を求めるべきだ。政府が危機感に煽られると、国民が動揺する。

産経社説は「市中感染のリスクは、人口と感染者数、特に経路不明の感染者数に比例して高くなる」とも指摘しているが、ここもよく分からない。インフルエンザと同様に飛沫感染する新型コロナは感染ルートを割り出しにくい感染症で、感染ルートが特定できないケースは増えていく。その意味で変異ウイルスも市中感染しながら感染者を増やしていく。

最後に産経社説はこう主張している。

「変異ウイルスの市中感染拡大に備えるために、感染症対策の基本である『検査』と『隔離』を徹底する強い施策が必要だ」

検査と隔離を強めれば強めるほど、患者・感染者に対する差別が生まれる。感染力が極めて弱いにも関わらず、国が隔離政策を押し通したハンセン病の悲劇を知らないのだろうか。新型コロナには適切な検査と適度な隔離を求めるべきだろう。