「新型コロナ感染拡大」と「医療逼迫」を安易に結びつけない

私は国に対し、国内の救急医療体制を早急に整備してほしいと思う。それはベッド数を増やすとか、国民に救急医療を受診しないように呼びかけることではない。また「新型コロナ感染拡大」と「医療逼迫」を安易に結びつけないでほしい。体制が整っていないから、新型コロナへの扱いが厳しいから(=2類感染症相当)医療が逼迫するのだ。

平成横浜病院健診センター長の東丸貴信医師が補足してくれた。

「コロナと他の疾患の導線を分けて、新型コロナ感染者のための専用病棟やICUに転用できる十分な病床と治療チームが確保されていれば、この程度の感染者数では医療逼迫を避けられたでしょう。飲食店などに感染防護徹底を具体的に再指導し、国民にも感染予防のルールを厳守した旅行や飲食をしてもらえれば、感染者数は海外レベルまで増えないと思います」

感染症を診る病院とがんなどを診る病院を分けるべき

また、ある救急医はこう指摘した。

「20年は、各病院の急性期に対応できる能力が示されたでしょう。病院機能を落とさずに対応できた病院と、救急診療の受け入れを制限せざるをえなかった、または実際に制限した医療機関は、今後も医師の働き方改革などでも同様に診療制限をしてくるのではないかと危惧しています」

どういうことかというと、コロナ禍でもスムーズに対応できた医療機関は、今後災害などの非常時や今回のような感染症、また医師の働き方改革によって、常在する医師の人数が少なくなったとしても「診療を閉鎖する」ことはおそらくない。

国は、新興感染症へ対応する病院、新興感染症の疑いのある患者が受診する病院、脳血管疾患や心疾患、交通事故など救急診療を請け負う病院、がんなどの生活習慣病を中心とした患者を診る病院と、地域ごとに医療機関の機能分化を進めるべきだ。そして各所に開業医を含めて当番制などで医師を集約化していく必要があるだろう。

読者にとって重要なことは、あなたが通常かかっている病院が20年に“診療制限”を行ったとしたら、今後もそういったことがある可能性を踏まえて、いつでもなんでも話せる「かかりつけ医」を見つけておいたほうがいい。