「結婚を安易に決めること」のほうが問題

だとすれば、オンライン化が進むことで問題になるのは、むしろ離婚届より婚姻届のほうではないだろうか。人生の節目となる結婚こそ、アナログで煩雑な手順を踏み、時間をかけて慎重に進めていくことが、「パートナーと人生を共にしていく」「新しい家族をつくる」といった覚悟を心に刻むための大事なプロセスになるからだ。

実際に、結婚までの手順を踏むことをおろそかにしたことが原因で、結婚後数年もたたないうちに離婚にいたったケースもある。代表的な例をみてみよう。

離婚届
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「親のために急いで結婚→コロナ離婚」の夫婦

アパレル系の企業に勤務するS太さん(40歳)は、5歳年下の元妻と今夏に離婚を決めた。S太さんが結婚したのは38歳の時。地方に住む両親から知人を介して紹介された女性と数回会って結婚を決めたという。「特にピンときたわけではなかったけれど、自分の会社にいる女性と違って地味な雰囲気でおとなしそうだった」と、元妻と出会った時の印象を語る。結婚を決めた理由は、両親を安心させたかったら。

S太さんはこう話す。

「いつまでも身をかためようとしない一人息子の自分が帰省するたびに、年老いた両親から『いつ結婚するの?』としつこく言われていた。『孫の顔を見ないと死ねない』とも。とにかく結婚さえすれば、両親の心配はなくなると思っていた」

結婚して2年目となる今春、S太さんと元妻は二人とも新型コロナウイルスの影響でリモートワークになった。新婚旅行以来初めて長時間二人だけで四六時中一緒に過ごす生活を経験して、お互いに「この人じゃないな」と気づいたという。「ありきたりな言葉になるが、すべてにおいて相手とは価値観が違った。もっと早く気づいていたら、相手のことも両親も悲しませずに済んだのに」と後悔を口にするS太さん。「彼女は再婚してもまだ出産できる年齢。はやめに別れ、お互いにやり直したほうがいいと判断した」というS太さんは、秋から本腰を入れて婚活をはじめるつもりだ。