アメリカ司法省が、グーグルを独占禁止法(反トラスト法)違反の疑いで連邦地裁に提訴した。かつて石油や鉄鋼では会社分割が実施されたが、果たしてグーグルは分割できるのか。『国家・企業・通貨 グローバリズムの不都合な未来』(新潮選書)を出した早稲田大学教授の岩村充氏は「デジタル空間で活動する企業に同じやり方は通用しない」という――。

※本稿は、岩村充『国家・企業・通貨 グローバリズムの不都合な未来』(新潮選書)の一部を再編集したものです。

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GAFAの実力には大きな格差がある

現代のグローバルIT企業はあたかも国家のような存在になりつつあります。国土という物理空間を支配し人々の心を統べようとするのが国民国家なら、国境の壁を越えて人々の心に入り込み、彼らの思う方向に向かわせる力を付けつつあるのが、現代グローバルIT企業です。

GAFA、すなわち検索エンジンのグーグル、ネット通販のアマゾン、SNSのフェイスブック、そしてコンピュータとスマホをファッションにしてしまったアップル、この4企業は20世紀の終わりごろに相次いで登場し、またたく間に世界の経済地図を大きく塗り替えるほどの成長を遂げました。

もっとも、このGAFAを一括りに扱ってしまうのが良いのかどうか、迷うところもあります。たとえばアップルですが、彼らの基礎になっているのはコンピュータ技術そのものですから、とりわけ新しいタイプの会社ではありません。

私は、アップルの本質は、IBMやマイクロソフトと同じようなコンピュータ会社で、ただ彼らのマーケティング面でのやり方が時代にマッチしたことが、先行する巨人たちに追いつき追い抜くことができた主な理由だと思っています。