相次ぐ業者摘発は規制強化と連動

国民生活センター&地方消費生活センターに寄せられたFX取引に関する相談件数の推移
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国民生活センター&地方消費生活センターに寄せられたFX取引に関する相談件数の推移

一主婦がFX(外国為替証拠金取引)で4億円儲けて1億3000万円脱税。大阪国税局管内では7億円稼いだ元自営業者一族が脱税で告発されたりと一般人FX長者が続々と話題になり、ここ2、3年にわかに注目を受けてきたFX。このFXに2009年夏から2010年にかけ大きく規制がかけられる見込みだ。

一つは、金融庁が2009年8月1日に施行する「顧客資産の保護強化」のための内閣府令。

これは、客の証拠金などを信託保全することと、顧客に信託金を超えた損失が出た場合に取引を強制終了させるロスカットルール(損切り制度)を徹底させる、というもの。

「大幅な損失を防ぐため、今回の府令以前にもロスカットルールはある程度導入はされていて、顧客が大幅損失しそうになると業者が強制手じまいをしてくれていた。が、実際は為替の急変動でロスカットができず、大損失を受ける人もしばしば」(業界関係者)

しかし、今回の規制強化の最大の眼目は別にある。証拠金倍率、いわゆる高レバレッジの規制だという。

FXが人気になった最大の要因は、少ない手元金でその100倍から、多いものでは600倍もの取引が可能。うまくいけば、例えば100万円の元手で100倍の取引を行い、当たれば億単位のカネが転がり込むシステムだ。

冒頭の脱税者らもそうした少ない投資額で大儲けしたクチだ。このため、脱税ニュースとも相まって一攫千金を夢見る投資家が急増した。

この人気の高レバレッジを金融庁は2010年度末までに50倍以下、さらに2年後には25倍以下に抑えるという。

「一般に知られると同時に、厳しい視線も注がれるようになった。ギャンブル性の高さゆえに金銭トラブルが頻発し、『何とかすべきだ』という声が日弁連などから出ていたのを受けた動きです」(金融庁関係者)

さらには、高レバレッジで一攫千金を夢見る一般人をだます悪質業者が多くなったのも大きい。

それは摘発を見ても歴然だ。例えば2009年7月、「FXで何億円も瞬時に稼ぐ、すご腕トレーダー」という触れ込みで顧客280人から20億円もの大金を集めていた投資会社「アライド」(大阪市)の杉本淑枝・代表社員(37歳)ら幹部が無登録営業で大阪府警に逮捕された。

「全国の投資家からカネを集めていたが運用失敗で大損。このため集めたカネをFXにまわさず配当や私的着服で自転車操業に追い込まれた」(全国紙社会部記者)

この「アライド」摘発と前後して道警が投資関連会社「オール・イン」(札幌市)でも無登録投資助言容疑で家宅捜索を行い詐欺容疑も視野に捜査を進めている。この会社は2万人の会員から約100億円を集めていた。

「相次ぐ摘発はFX規制強化と連動している」(全国紙社会部記者)

こうした規制の動きに業界の一部からは依然「死活問題」、投資家からは「魅力半減」と反対の声も。しかし、ここは、いかがわしい業者も乱立している中で業界全体の健全な発展のためにも、規制で熱を冷まして冷静になる必要があるのかもしれない。

では、今後業界で生き延びるのはどんな業者か。「ギャンブル性が薄れた分、ロスカットルールをきちんとやり抜く仕組みをしっかりつくりあげ信頼を得られた企業」(業界関係者)ということになりそうだ。

※すべて雑誌掲載当時