08年度の制作会社1社平均の売上高は前年度より2割近くダウンの6億9000万円の見込みだ。20億円以上を売り上げる会社は全体の15%程度で、その会社が業界全体の売上高の76%を占める。圧倒的な数の零細の制作会社は、テレビ局からの発注を受けた大手制作会社から孫請けすることで、ようやく経営できているのが実情なのだ。

これではキー局のテレビマンのような高給は望むべくもない。07年度の制作会社従業員の1人当たり平均給与総額は436万円で、全産業の平均445万円すら下回っている。もっともこれは福利厚生費や退職金、退職手当引当金などが10%程度含まれた額であり、それを除けば平均で400万円台を割り込む。孫請け中心の零細制作会社なら、30代で年収300万円程度というのも珍しくない。朝から晩まで長時間拘束されることを考えれば、「時給ではアルバイトのほうが上」という可能性も十分にある。

制作会社従業員の年収はテレビマンの4分の1。生涯賃金に換算すると制作会社の従業員は約1億5000万円で、フジテレビ局員との乖離は4億円以上にのぼる。まさに、テレビマンが高給を貪る一方で、零細の制作会社が薄給に耐えながら制作を担っている、という構図。「所得格差、ここに極まれり!」だ。

鉄壁のピラミッド構造は、メーカーが下請けに支えられている自動車産業と変わらない。しかもテレビ局はメーカーのような組み立ても行わず、予算配分権を握り、丸投げするのみ。予算配分権を握ることはビジネスの肝であり、どの業界にも下請けの悲哀はあるが、テレビ業界はちょっと酷い。米国では大手制作会社が独立した立場でコンテンツを制作し、その放送権をテレビ局に売るビジネスモデルが成立している。両者は対等な立場にあり、日本とは大きく異なる。

(構成=高橋晴美)
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