日本ではこの頃から新型コロナの感染が東京、大阪、名古屋、福岡など大都市圏を中心に、急増する気配がみえはじめていた。現に連休明けの3月24日ごろから感染者の数は鋭角的に増えている。

だが小池百合子都知事はこの時、沈黙を守る。東京オリンピック・パラリンピックの延期問題に忙殺され、状況を甘く見ていたのではないか。一部ではそんな邪推もされた。

初めて「ロックダウン」に言及した小池都知事

連休が明けると、小池知事は一気呵成かせいに動き出す。23日の記者会見では、日本の政治家として初めて「ロックダウン」(都市閉鎖)の可能性に言及した。

「専門家の皆さま方からのご指摘で、海外から多くの在留邦人が帰ってこられるという状況がございます。こうした方々を起点とするクラスターが形成されるおそれがあるとのことで、いわゆるオーバーシュートが発生しかねない。そうなりますと、強力な社会的な隔離策をとる以外に、逆に選択肢がなくなるということでございます」

「強力な社会的な隔離策」、言うまでもなく「ロックダウン」のことだ。会見ではさらに「都市の封鎖、いわゆるロックダウンなど、強力な措置をとらざるを得ない状況が出てくる可能性があります」と強い口調で念を押したのである。

この発言は事前に安倍首相や官邸と調整されたものではなかった。それが宣言発令に微妙な影を落とすことになる。それはともかくとして、この発言が都民にとどまらず国民の多くに大都市・東京でもロックダウンがあるかもしれない、そんな不安を想起させたことは間違いない。

タイミングを合わせるかのように、日本を代表するコメディアンの志村けんさんが新型コロナに感染して帰らぬ人となった。3月29日のことだ。

小池知事のロックダウン発言と「志村けんの死」。この2つが“コロナ疲れ”で緩みはじめていた日本人の意識を、一瞬のうちにピーンと引き締めたのである。