■崖縁険一(仮名)
【家族の人数】4人
【家族構成】妻(44歳)、長女(中3)、次女(小3)
【世帯年収】900万円
【貯蓄】ほとんどなし


 

「家計のことは妻にすべて任せきりなので、よくわからないんですよ。年収はそこそこだと思うのですが、毎月赤字だとボヤかれてばかりで。カードの支払い時期などは、ついケンカになったりもします。同僚たちはもう少し余裕があるように見えるのですが、いったいどうやりくりしているのか聞きたいくらいです」

そう首をかしげるのは、広告代理店勤務の崖縁さん。バブル時代を経たこともあり、かつては金銭的に余裕のある生活を謳歌していた。事情が一変したのは10年前。34歳で昇進してからのことだ。

「残業代がつかなくなったんですよ。年収換算で約200万ほどのダウン。これが、かなり痛かったですね」

収入はダウンしたのに、支出は年々増えていく。8年前に購入した自宅のローンに、2人の娘たちの教育費もある。2人ともピアノを習い、長女は塾、次女は新体操にも通っている。なんだかんだで毎月少しずつ支出がオーバーするので、今はボーナスで補填して帳尻を合わせている状況だ。

ただ、それほど浪費している感覚はない。週1万円の小遣いは、毎日の昼食とタバコ・缶ジュース代で消えてしまうので、仕事のつき合い以外では飲みにもいかず、家で食べるようにしている。以前は通勤に使うほど乗り回していたマイカーも、めっきり乗らなくなった。趣味も、同僚たちと月に1~2回楽しむゴルフだけだ。その費用も、自分のヘソクリから出すことが多い。年2回のボーナス時に、10万~20万ずつ社内預金に移動させて捻出したものだ。妻には内緒だが、毎月の給料はすべて渡しているのだから、それぐらいは許してほしい。

だが、心中ではこの綱渡り生活に一抹の危機感を抱いている。来年は長女が高校に進学するし、住宅ローンもまだまだ残っている。自分は長男だから、現在一人暮らしの実父の面倒も、やがては見ることになるだろう。なのに、貯金はほとんどない。頼みのボーナスも、このご時世では大幅カットにならないとも限らない。妻も、総菜屋でパートをしているが、フルタイムではないので家計のわずかな足しになる程度。このままでいいのだろうか。そんな不安が募っている。