あなたは何に「依存」しているだろうか。アルコール依存症の専門家である久里浜医療センターの中山秀紀精神科医長は「依存物は人類最強(凶)の敵の一つ。そのなかでも現在最強なのがスマートフォンだ。特にオンラインゲームは極めて依存しやすい仕組みなのに規制がない」と指摘する――。

※本稿は、中山秀紀『スマホ依存から脳を守る』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

ベッドで携帯電話でゲームをしている少年と女の子
写真=iStock.com/miljko
※写真はイメージです

「最凶の依存物」は規制までに20年かかった

人と依存物の歴史には共通点があります。

まず、人が依存物を「発見」します。当初はその使い方がよくわからなかったりしますが、やがて依存物の「効用の発見」をします。依存物は即時的な「快楽」をもたらすので、「これは素晴らしいものだ!」といって人々の間に広く知れ渡り、使われるようになります。その間にしばしば依存性のある物質が抽出されるようになるなどの、「性能強化」がなされます。

多くの人々に広まり「蔓延」すると、次第に依存物の害による「社会問題が拡大」します。公共秩序の乱れや生産性の低下につながるので、政治的、宗教的、道徳的な「規制」が入ります。

しかし「規制」ができるまでに、かなり時間を要する場合もあります。覚せい剤の場合には終戦後、日本において一般に「蔓延」してから、規制する法律ができるまで数年程度でした。一方でその依存度や離脱(禁断)症状の強さから、最強(凶)の依存物とされるヘロインの場合は、1898年にドイツのバイエル社によって鎮痛・鎮咳剤として発売(1874年に初めて合成)されますが、ドイツでは1921年のアヘン協約の批准まで20年以上も、薬局で自由に手に入れられたとされています。