カゼを早く治すためにはどうすればいいのか。医師の木村知氏は、「市販のカゼ薬にも、医師が処方する薬にもカゼを治す効能は一切ない。むしろ有害となることさえある。ゆっくり身体を休めることしかない」という――。

※本稿は、木村知『病気は社会が引き起こす』(角川新書)の一部を再編集したものです。

病院の待合室
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あのCMは真っ赤なウソ

カゼの症状が出たときに、医療機関にかかる前に、とりあえず市販の薬を飲むという人もいるだろう。総合感冒薬のCMで、「速攻◯◯アタック」とか「効いたよね、早めの◯◯」というキャッチコピーを繰り返し聞かされ続けていれば、「カゼを引いたら早めに薬で症状を抑えないと長引いてしまう」「早く治すためには、症状の出始めに薬を飲むべきだ」と思ってしまっても仕方ない。

たしかにこれらの総合感冒薬に含まれている成分は、解熱鎮痛剤、鎮咳薬、去痰剤、抗ヒスタミン剤、気管支拡張薬など、カゼの諸症状を力尽ずくで抑え込もうとミックスされた最強の布陣ともいえる。

しかし、これらの総合感冒薬がカゼに著効したという経験を持っている人は、多くないはずだ。それもそのはず、これら各々の薬剤はカゼを治す効能を持っていない。長引かせない効能もない。つまり早めに飲んだからといって早く治るわけでもないのだ。多少は症状が一時的に緩和されることもあろうが、大した効果を期待できるものではない。

事実、2017年、米国胸部医学会の専門家委員会は、「カゼに効く」とされているあらゆる治療法には、効果を裏付ける質の高いエビデンスがあるものは一つもなかったとし、「カゼによる咳を抑えるために市販の咳止めやカゼ薬を飲むことは推奨されない」との見解を示している。つまり、これらの薬の服用は無意味であり、CMのキャッチコピーは真っ赤なウソ、効能・効果に関して虚偽または誇大な広告の流布を禁ずる薬事法第66条に抵触し得るのだ。