同じようにストレスがたまりそうな状況に置かれても、すぐに音を上げる人とそうでない人がいるのはなぜか。早稲田大学人間科学学術院教授の熊野宏昭氏は、「私たちは自分で自分を不安にして、問題を大きくしている。目の前の等身大の現実に気づくようにすることが、ストレスに強い心を作る」と語る——。

本稿は熊野宏昭『実践! マインドフルネスDVD』(サンガ)の一部を編集したものです。

目の前の等身大の現実に気づくようにすることが、ストレスに強い心を作る――(※写真はイメージです)
写真=iStock.com/cash14
目の前の等身大の現実に気づくようにすることが、ストレスに強い心を作る——(※写真はイメージです)

ストレスがたまらない人は何が違うのか

ストレスは借金と似ています。借金はしなければいいようなものですが、たとえば、家を建てたいとか、子どもの教育をしたい、そういうある程度、お金が必要になるときに、借金ができるからこそ、今まで、自分1人の稼ぎではできないようなことも実現できるという良い面があります。しかし借金を返さないでいつまでもためていると、破産してしまいます。だから、借金を返すことがとても大事なのです。

ストレスは、ストレッサーという状況要因があるために、われわれの体や心にたまっていきます。では、私たちはストレスに対してどのような対策をとればよいのでしょうか? 対策としては、発散する、無理をしないなど考えられますが、そうそううまくいくものではありません。

一連のプロセスでストレスを理解する

そこで、ストレッサーとストレスの間にある「個人要因」に注目してみましょう。同じ状況に置かれてもストレスがたまる人とたまらない人がいます。あるいはストレスがたまるような状況でも、別に何も起こらない人と、すぐに音を上げる人がいます。ストレスを感じるか感じないかは、個人によって違いがあるのです。

抵抗力を高める3つのアプローチ

個人によって感じ方に違いのあるストレスですが、ストレスに対する個人の抵抗力は、「体質」「習慣」「心」のそれぞれの面で強めることができます。

1.体質の改善

問題点:力みが生じ、肩が凝ったり、頭が痛くなったり、眠れなくなったりします。
改善策:「力まず」=日頃から力まないよう(緊張を緩めるよう)にしていくと、ストレスがたまりにくくなります(リラクセーション)。

2.習慣の改善

問題点:苦手なものはなるべく避けて後回しにし、やらないようにすることは、結局はさらに大きなストレスをためる原因になってしまいます。
改善策:「避けず」=なるべく避けずにいろいろとやってみることが大事です。