読解力の判断基準が理解力から評価力へと大きくシフト

調べて見ると、今回の読解力テストは、前回と比較して「理解力」というより、「評価力」に重点を移したものだった。この点を図表3に整理した。

読解力の判断基準

OECDによれば、読解力は「①情報探索力」と「②理解力」と「③評価・熟考力」の3つの能力から判断されており、実は、今回「③評価・熟考力」に特に重点を置かれるように変更されたのである。

「③評価・熟考力」に関わる出題例としては、イースター島における森林消滅についての複数の要因説、すなわち島民による環境破壊説、及びナンヨウネズミという害獣犯人説を比較評価させる設問があった。

このほか、電子レンジを宣伝する企業サイトと雑誌記事を比べて、真偽を評価し、根拠を示してどうするかを答える記述式問題もあった。これらの正答率がOECD平均の27.0%に対して日本は8.9%と低かった。

読解力の得点は、OECDによって、読解力を構成する「個別の能力」でも採点されている。図表3にも記したように、日本の点数順位は、「②理解力」では、英米を上回る13位と成績がよかったが、その他の2能力では英米を下回り、特に「③評価・熟考力」では19位とかなり低かったのである。つまり「③評価・熟考力」に重点シフトしなかったならば、読解力全体の点数はそれほど下がらなかったはずなのである。

つまり、日本の高校生は「③評価・熟考力」が得意でなかったため、読解力が下がったように見えたのである。しかし、この「評価・熟考力」が不得意という傾向が、調査を受けた15歳だけでなく日本人全体に言える「文化バイアス」である可能性もあり、重大な問題をはらんでいる。